サマリー
◆岸田政権は重点政策の1つに、賃金の引上げ額に応じた法人税の減税措置(賃上げ税制)の拡充を掲げている。2013年度に創設された賃上げ税制は、2019年度にかけて年あたり約0.6兆円の名目雇用者報酬の引き上げに寄与したと試算される。もっとも、企業は本制度を利用して賞与を引き上げるケースが多く、所定内給与などの固定給の引上げにはつながりにくかった。
◆短期的には賞与の引上げよりも固定給の引上げが個人消費の増加に寄与する。仮に新たな賃上げ税制の減税額を過去最大規模の0.4兆円と仮定し、それが全て固定給の引上げにがった場合、約0.6兆円の消費拡大をもたらす試算結果となった。賃上げが消費へと回り、それがさらに企業収益となるという「成長と分配」の好循環をもたらすかのカギは固定給の引上げにあるといえる。
◆「賃上げ税制」を見直す際には、固定給の引上げを減税の条件とするかどうかが注目される。その際、社会保険制度における申告書や決定通知を用いれば、個人別の前年度比の給与の増減を企業および税務当局の双方が容易に捕捉・判別できる。税務だけでなく社会保険におけるデータも活用しつつ、実効性の高い制度設計を行うことが望まれる。
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