ウィズコロナ下の社会経済活動引き上げの課題

過大な消費抑制をもたらす緊急事態宣言の発出回避の枠組みが必要

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2020年08月25日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 永井 寛之
  • 経済調査部 エコノミスト 岸川 和馬
  • 和田 恵
  • 山口 茜

サマリー

◆日本を初め多くの国では、社会経済活動と感染拡大防止の両立が課題となっている。この分野の先行研究をもとに評価すると、緊急事態宣言中の個人消費の抑制は過大だった可能性がある。だが、新型コロナウイルスの知見や対応策などが限られていた4月の状況を踏まえると、全都道府県への宣言発出はやむを得ない措置だっただろう。

◆感染第1波の収束に成功したといえる6カ国・地域の取り組みに注目すると、感染拡大の初期に厳しい制限措置が導入されており、収束後も一定の厳しい措置が維持されていた。ただ、すでに社会経済活動を再開させた日本が特に参考にすべきは、接触追跡と検査体制だろう。今後は医療提供体制の強化に加え、地域・クラスターごとに感染拡大防止策の厳しさを調整するなど、メリハリのあるピンポイントの対策を実行するための接触追跡・検査体制の強化が一段と求められるのではないか。

◆現在は4月とは状況が異なり、緊急事態宣言を直ちに再発出する段階にはないと考えられる。しかし国民の間では、政府が経済を重視するあまり感染拡大時の必要な対応が遅れ、感染爆発の発生を招くのではないかとの懸念は根強い。こうした不安を払拭し、社会経済活動と感染拡大防止の両立させるためにも、感染爆発の発生を回避するための政策的な枠組みを具体化させる必要がある。専門家による感染状況の判断に政策の実行性が伴えば、家計や企業は感染拡大がある程度進む中でも経済活動を行いやすくなろう。

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