サマリー
◆日本を初め多くの国では、社会経済活動と感染拡大防止の両立が課題となっている。この分野の先行研究をもとに評価すると、緊急事態宣言中の個人消費の抑制は過大だった可能性がある。だが、新型コロナウイルスの知見や対応策などが限られていた4月の状況を踏まえると、全都道府県への宣言発出はやむを得ない措置だっただろう。
◆感染第1波の収束に成功したといえる6カ国・地域の取り組みに注目すると、感染拡大の初期に厳しい制限措置が導入されており、収束後も一定の厳しい措置が維持されていた。ただ、すでに社会経済活動を再開させた日本が特に参考にすべきは、接触追跡と検査体制だろう。今後は医療提供体制の強化に加え、地域・クラスターごとに感染拡大防止策の厳しさを調整するなど、メリハリのあるピンポイントの対策を実行するための接触追跡・検査体制の強化が一段と求められるのではないか。
◆現在は4月とは状況が異なり、緊急事態宣言を直ちに再発出する段階にはないと考えられる。しかし国民の間では、政府が経済を重視するあまり感染拡大時の必要な対応が遅れ、感染爆発の発生を招くのではないかとの懸念は根強い。こうした不安を払拭し、社会経済活動と感染拡大防止の両立させるためにも、感染爆発の発生を回避するための政策的な枠組みを具体化させる必要がある。専門家による感染状況の判断に政策の実行性が伴えば、家計や企業は感染拡大がある程度進む中でも経済活動を行いやすくなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
企業の賃金設定行動の整理と先行きへの示唆
~生産性に応じた賃金決定の傾向が強まる可能性~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
石破政権の経済政策に求められるもの
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
最新のレポート・コラム
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
-
金利上昇下における預金基盤の重要性の高まり
~預金を制するものは金融業界を制す~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
企業の賃金設定行動の整理と先行きへの示唆
~生産性に応じた賃金決定の傾向が強まる可能性~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
「外国人優遇」は本当か?データで見る国民健康保険・国民年金の実態
2025年07月25日
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日