ウィズ・コロナの成長鈍化とグローバル・ガバナンスの不在

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2020年05月25日

  • 児玉 卓

サマリー

国による状況の違いはあれ、先進諸国は段階的な経済活動の再開に動き始めている。しかし、それは新型コロナウイルス感染再拡大のリスクを伴ったものでもあり、だからこそ景気のV字回復は困難であるというコンセンサスが国、地域を超えて形成されつつある。ウィズ・コロナのニュー・ノーマルにおいて家計、企業、政府に求められる適切な行動様式の模索がしばし続かざるを得ず、だれもが全力疾走することを控えざるを得ないからだ。家計消費に関してはいくばくかのペントアップディマンドの顕在化も見られようが、経済活動正常化への道筋の不透明感が、企業の設備投資を抑制し続けることは必至のように思われる。政府の役割が比較的大きい状況が常態化することも想像に難くない。つまり予想されるのは、世界経済のドライバーとしての民間企業の利益追求活動の位置づけが後退し、国益に基づく各国政府の役割、行動の比重が増す中で、世界経済の成長率の停滞が続くことである。このところ深刻化しつつある米中対立も単なる「再燃」ではなく、ウィズ・コロナの新たな装いをまとったものであるとも考えられよう。そして言うまでもなく、こうした自国中心主義的風潮の強まりは、いわば自己実現的に世界経済の復調の足取りを重くする。そして、恐らくその最大の被害者となるのが、今まさにコロナショックの真っただ中にある新興諸国であろう。逆に言えば、今新興国が必要としているのは、真っ当に機能するグローバル・ガバナンスに他ならない。

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