中東緊迫がむしろ世界経済を後押しする?

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2020年01月23日

  • 児玉 卓

サマリー

年初の米国・イランの対立をきっかけとする金融市場の動揺は早期に収束した。むしろ現状では、米軍によるイラン革命防衛隊のソレイマニ氏殺害以前よりも原油価格は低位にあり、円も安くなっている。株価は米国を中心に絶好調である。そのカギはトランプ米政権のプライオリティの所在がはっきりしたことにあろう。もとよりトランプ氏が秋の大統領選挙を最重要視していることは広く認識されていたが、これまでの同氏の前言撤回や予測困難な言動などもあり、一貫した政策の遂行についての疑念は根強く残っていた。それが払拭されたとまでは言い切れないが、対イラン対立の激化回避の姿勢が示されたことで、トランプ政策が「選挙に得か損か」を軸として展開されるという見通しの確度が高まった。つまり政策にかかわる不確実性が後退したのである。であれば対中摩擦の棚上げも、従前よりも素直に解釈できるようになる。摩擦の深刻化は米国景気にマイナスであり、それは再選に不利に働く。従って少なくとも選挙が終わるまでは対中摩擦激化はないだろうというシンプルな見通しの妥当性が増したということだ。ある意味、2020年の世界経済はハプニングに見舞われながらも、かえってそれが奏功して順当なスタートを切ったといえそうだ。ただし2020年は前年に顕著となった市場(好調な株価)と実体経済(の不調)の乖離が収斂するかにも注目しておく必要がある。足元ではその乖離がより明確化してしまった格好であり、不確実性の低減が世界貿易の回復、製造業の景況感好転に結び付いていくことが、波乱の少ない2020年の世界経済には必須の条件となろう。

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