サマリー
◆1月31日に英国はついにEUから離脱する。「合意あり」の離脱となって、2020年末までの「移行期間」中は英国とEUの通商関係は従来と変わらない。ただし、英国とEUの新たな通商関係に関する協議はここから始まり、移行期間終了までに合意できるか予断を許さない。限られた時間の中で何を優先的に交渉するのか、譲れない一線をどこに引くのか、まずは双方の交渉方針が注目される。
◆英国経済は「合意なし」の離脱の可能性が高まった中で、2019年半ばから停滞感が強まり、10-12月期の小売売上高は前期比-0.9%と7四半期ぶりに落ち込んだ。また、12月の消費者物価上昇率は前年比+1.3%と3年ぶりの低水準となったため、英中銀(BOE)の利下げへの期待が金融市場で急速に高まっている。もっとも、「合意あり」の離脱に道を開いた12月の総選挙後、住宅販売業者の景況感が大幅改善するなど景気の持ち直しを期待させる動きがあり、また3月11日公表予定の2020年度予算案では公共投資拡大など景気対策が盛り込まれる可能性が高い。BOEは当面は景気とインフレ動向を注視しつつ、利下げのタイミングを計るのではないかと予想する。
◆ユーロ圏経済は2018年以降、輸出不振が鉱工業生産の落ち込みにつながり、低成長が続いてきた。ただし、米中の通商協議が第1段階の合意に達し、英国の「合意なし」の離脱が回避されたことを好感し、ドイツのZEW指数のように市場関係者の景気見通しは1月に大きく改善した。とはいえ、米中の通商協議進展と、英国のEU離脱実現がユーロ圏の外需拡大要因となるかどうかまだ明確ではない。景況感の改善が鉱工業生産の持ち直しにつながるかが注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日