サマリー
このところの世界的な株価下落がドル金利の上昇を主因とするものであれば、長くは続かないだろう。より警戒すべきは、ドル金利の「下落」と株安との併存である。ドル金利の上昇は、米国経済の強さという裏付けを持ったものであり、それが失われた時、世界経済は米国独り勝ちから、けん引役不在の状況に移行する。株安の要因が金利から世界的な景況感の悪化に変化するのである。その際には、為替市場の最強通貨がドルから円(およびスイス・フラン)に代わると考えられるが、現状、円高圧力はさほど高くない。ドルの強さは健在であるようにみえる。米国景気への楽観が崩れつつあるわけでは恐らくなく、局面転換への時間的猶予はまだあろう。ただ、循環的な成熟化が進んだ米国が世界経済のけん引力を一層高めていくというシナリオはないものねだりに他ならず、いち早く減速過程に入った中国やユーロ圏が米国にとって代わる見込みも立ちにくい。米中貿易戦争の生産効率阻害効果、需要抑制効果などが顕在化するにつれ、世界経済けん引役不在局面の到来の蓋然性は増してくる。金融市場は近くしばしの小康を得ると考えたいが、中期的には警戒を要する局面が続くとみざるを得ないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
欧州経済見通し じわじわ悪化する景況感
進展しないBrexit交渉、イタリア財政懸念、原油高などが重石に
2018年10月24日
-
日本経済見通し:2018年10月
米中貿易戦争の本質 -「歴史の終わり」の終わり(もしくは始まり)-
2018年10月23日
-
中国:成長率はとうとう下振れ
米中貿易戦争で高まる先行き不透明感 VS 景気サポート策
2018年10月23日
-
米国経済見通し 中間選挙後の米国経済
上下院での「ねじれ」発生が基本シナリオ、議会での立法は停滞へ
2018年10月23日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年5月貿易統計
輸出数量は横ばい圏を維持も、円高効果等で輸出額は8カ月ぶりに減少
2025年06月18日
-
2025年4月機械受注
民需(船電除く)は減少し、コンセンサス通りの結果だった
2025年06月18日
-
2025年6月日銀短観予想
現状判断DIは底堅いが、米関税政策の不確実性で先行きは悪化へ
2025年06月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日