サマリー
◆2018年4月の全国コアCPI(除く生鮮食品)は前年比+0.7%と16ヶ月連続のプラスとなり、市場コンセンサス(同+0.8%)を下回った。季節調整値によって指数の基調的な動きを確認すると、全国コアCPIと全国新コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)はいずれも、足下で伸び悩んでいる。
◆先行きの全国コアCPIの前年比は、前年に下落していた裏の影響が剥落することで当面足踏み状態となる見込みである。ただし、その後は、エネルギー以外の価格が底堅く推移するなか、これまでの原油価格上昇の影響がラグを伴って顕在化し、再びプラス幅を緩やかに拡大するとみている。さらに、足下で為替レートが円安へと転じていることも、今後の物価上昇圧力となる。当面の焦点は、原油価格と為替レートの推移に加え、食料品、外食、運輸関連で着々と顕在化し始めているコストプッシュ・インフレの動向と実体経済への影響だ。
◆原油価格の先行きについては、米国の対イラン経済制裁の影響が最大の焦点であり、加えて、ベネズエラ経済危機に伴う供給懸念、中東を中心とする地政学的リスクの高まり、2018年6月22日に予定されているOPEC総会の結果などにも注目したい。足下で米国リグ稼働数が再び増加していることは原油価格にとってマイナス材料であるが、現在のところ、イラン問題にほとんどかき消されてしまっている感が強い。
◆消費者物価はいったん足踏みした後、日本銀行のインフレ目標に向けて再び緩やかに上昇すると見込まれる。こうしたなか、2018年4月27日に公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)【基本的見解】」において、2019年度頃というインフレ目標の達成時期に関する文言が削除された。達成時期に関する文言を削除することにより、今後の金融政策運営の自由度が相対的に高まるため、その意味で、今回の決定は評価できる。なお、海外の中央銀行では、達成時期を明示せずに中長期的な目標としているケースが多い。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2018年3月全国消費者物価
実質賃金と実質年金の低下が個人消費の重石へ
2018年04月20日
-
原油高で消費者物価と家計のエネルギー負担額はどうなる?
低所得世帯ほど負担感が大きく、消費者マインドも下押しへ
2017年11月29日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年3月雇用統計
失業率は上昇するも、求人倍率が上昇するなど雇用環境は悪くない
2025年05月02日
-
消費データブック(2025/5/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年05月02日
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日