2018年4月全国消費者物価

生鮮インフレ去って、再び原油インフレへ

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2018年05月18日

  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 小林 俊介

サマリー

◆2018年4月の全国コアCPI(除く生鮮食品)は前年比+0.7%と16ヶ月連続のプラスとなり、市場コンセンサス(同+0.8%)を下回った。季節調整値によって指数の基調的な動きを確認すると、全国コアCPIと全国新コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)はいずれも、足下で伸び悩んでいる。

◆先行きの全国コアCPIの前年比は、前年に下落していた裏の影響が剥落することで当面足踏み状態となる見込みである。ただし、その後は、エネルギー以外の価格が底堅く推移するなか、これまでの原油価格上昇の影響がラグを伴って顕在化し、再びプラス幅を緩やかに拡大するとみている。さらに、足下で為替レートが円安へと転じていることも、今後の物価上昇圧力となる。当面の焦点は、原油価格と為替レートの推移に加え、食料品、外食、運輸関連で着々と顕在化し始めているコストプッシュ・インフレの動向と実体経済への影響だ。

◆原油価格の先行きについては、米国の対イラン経済制裁の影響が最大の焦点であり、加えて、ベネズエラ経済危機に伴う供給懸念、中東を中心とする地政学的リスクの高まり、2018年6月22日に予定されているOPEC総会の結果などにも注目したい。足下で米国リグ稼働数が再び増加していることは原油価格にとってマイナス材料であるが、現在のところ、イラン問題にほとんどかき消されてしまっている感が強い。

◆消費者物価はいったん足踏みした後、日本銀行のインフレ目標に向けて再び緩やかに上昇すると見込まれる。こうしたなか、2018年4月27日に公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)【基本的見解】」において、2019年度頃というインフレ目標の達成時期に関する文言が削除された。達成時期に関する文言を削除することにより、今後の金融政策運営の自由度が相対的に高まるため、その意味で、今回の決定は評価できる。なお、海外の中央銀行では、達成時期を明示せずに中長期的な目標としているケースが多い。

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