サマリー
◆2月の完全失業率(季節調整値)は、前月から0.1%pt上昇し2.5%となった。男女ともに就業者は大幅に増加した。年初から新たな労働参加の動きが強く、内容としては良好だ。ただし、男性の就業者増加の主因は自営業主・家族従業者の大幅な増加であり、一時的なぶれにすぎない可能性が考えられる。他方、2月の有効求人倍率(同)は、前月から0.01pt低下し1.58倍、新規求人倍率(同)は前月から0.04pt低下し2.30倍となった。また、正社員の有効求人倍率(同)は前月から横ばいの1.07倍となった。
◆1月の現金給与総額(速報値)は前年比+0.7%と6ヶ月連続で増加した。内訳を見ると、所定内給与(同+0.2%)、特別給与(同+9.3%)が増加し、所定外給与は横ばいであった。特に一般労働者の特別給与の増加(同+9.5%)が全体を押し上げた。
◆2018年の春闘に関して、連合によると、足下までの賃上げ率は第2回回答集計時点で2.17%となった。昨年よりやや高い水準でのスタートとなったものの、2000年以降で賃上げ率が最も高かった2015年の第2回回答集計時を下回っており、政府が要請する3%にはほど遠い。ただし、ベアは2015年に引けを取らない水準にある。しかし、物価が大きく上昇している現状を踏まえると、消費拡大につながるほどの力強さはない。
◆先行きの労働需給はタイトな状況が続き、失業率は上下しながらも2%台半ばで推移するとみている。失業率は1980年に1%台を記録しているが、今後その水準まで低下するには、職種に関するミスマッチの解消が必要だ。また、2019年度以降導入予定の残業規制等を背景に、企業の人手不足感は一層強まるとみている。特に人手不足が深刻な産業では、正社員化や賃金引上げといった処遇の改善や省人化投資が必要だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
-
2025年11月全国消費者物価
エネルギー価格の伸び率拡大を食料品価格などの伸び率鈍化が相殺
2025年12月19日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

