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日本の労働生産性に関する地域的接近

医療・福祉への資源偏在と大規模事業所の地域間生産性格差に課題

2018年01月05日

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

サマリー

◆国際的に日本の労働生産性の改善スピードは遅いが、近年は就業者数よりも付加価値額が伸びて労働時間も短縮化されており、全体では時間当たり労働生産性は改善している。


◆労働生産性の伸び率を要因分解すると、高度成長期と比べて資本装備率やTFPが労働生産性に与える影響は弱まり、代わって労働の質による影響が増している。特に女性の高技能労働者がうまく活躍できるような働き方改革や保育所の整備、税制改革が互いに整合的に行われることが、今後の地域の労働生産性の改善には必要だ。


◆全国的な景気の改善に加えて地域特有の影響も加わり、労働生産性は改善している。しかし、西日本など一部の地域では付加価値額が伸び悩む医療・福祉分野に多くの資源が投入されており、地域の労働生産性を構造的に下押ししている。また、同一産業内で見た労働生産性も地域間で大きく異なっており、特に大規模事業所において労働生産性の地域間格差が顕著になることも分かった。


◆超高齢化が進む地域では医療・福祉分野は成長産業であり、実際に従事者数は大きく伸びている。しかし、医療・福祉分野の市場価格は公的に管理されているため、需給を適切に反映した形で付加価値が伸びていくという姿を描けていない。これが地域で労働生産性がなかなか改善しない原因の一つだと言える。また、大規模事業所で労働生産性の地域間格差が大きいことは、人口減少下で規模が大きいと地域内・地域間での競争圧力から逃れやすく、逆に生産性の低い事業所が温存されてしまうのかもしれない。


◆地域の比較優位分野を強化しつつ、競争環境を強化するビジネス環境作り、例えば国家戦略特区やレギュラトリー・サンドボックス制度、行政手続きの簡素化、中小企業への輸出支援や税制面などでの過度な保護政策の縮小、都市圏・海外も含めた域外資本・人材の積極的な導入、そして混合医療・介護の拡大といった市場機能の拡大などが必要だ。


◆競争力のある産業へ人材を移動させつつ労働への分配を増やしていくには、社会保障といった受動的なセーフティネットだけでなく、リカレント教育のような積極的なセーフティネットも重要だ。地域の労働生産性を高めるには、共通したビジョンのもとで各政策のインセンティブ構造が矛盾しない、整合性を持った構造改革が求められる。

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