サマリー
概ね出揃った7-9月期の各国のGDP統計は、世界経済の好調持続を示している。もとより好調な米国に、ユーロ圏が牽引役として加わっており、アジア新興国でもタイ、フィリピンなど、前年比ベースで加速している国が多い。自国の内需拡大が他国を潤し、それが再度自国に利益をもたらすという好循環が働いている。こうした中、すでに減速過程に入りつつあるとみられるのが中国である。世界に逆行する景気循環は、良くも悪くも同国経済の「自律性」の高さを表しているが、これは他のほとんどの新興国には見出し難い中国の特質と言えよう。それは同国の経済規模の大きさに加えて、資本移動を通じたグローバルな連動性の希薄さなどの結果でもあると考えられる。いずれにせよ、同国経済の行方が、世界経済好調持続に対する一つのリスクファクターであることは確かであろう。その点、注目すべきは先の共産党大会において、習近平氏がどの程度、権力基盤の強化に成功したかである。同氏の失政に付け込む政敵の排除に成功したのであれば、経済的にも思い切った構造改革を進めることが可能となるが、例えば国有企業改革による失業の増加などが中国経済のアップダウンを増幅させ、その余波が周辺国に及ぶ可能性を高めることにもなる。好調な世界経済に逆行する中国の政治に注視したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:住宅販売低迷と環境規制の影響が出現
10月の小売売上減速は11月のネットセールスを前にした買い控えも
2017年11月21日
-
欧州経済見通し ドイツの政治波乱?
英国の二の舞を避けることはできるか
2017年11月21日
-
米国経済見通し 正念場を迎える税制改革
上院内での反対意見に加え、上下両院案には隔たりが残る
2017年11月21日
-
日本経済見通し:2017年11月
堅調な景気拡大が続くが、成長速度は17年度に一旦ピークアウト
2017年11月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年7月機械受注
金融業・保険業、不動産業などの受注減で軟調な結果
2025年09月18日
-
2025年8月貿易統計
トランプ関税や半導体需要減の影響継続で輸出金額は4カ月連続減少
2025年09月17日
-
トランプ関税でインバウンドに黄色信号
中国人旅行客の伸びしろは大きいものの、他国の状況は厳しい
2025年09月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日