サマリー
◆ユーロ圏の7-9月期の実質GDP成長率は前期比+0.6%と、18四半期連続のプラス成長となった。バランスのとれた経済成長となっており、フランスやイタリアなど回復が遅れていた国々でも景気回復の足取りがしっかりしてきた。牽引役としては従来からの個人消費に加え、総固定資本形成や純輸出も貢献しつつある。消費者と企業の景況感が一段と改善していることを踏まえ、ユーロ圏の成長率予想を2017年+2.3%(これまでは+2.2%)、2018年+2.0%(同+1.8%)へそれぞれ上方修正した。ECB(欧州中央銀行)は2018年1月以降、毎月の資産買取額を現行の600億ユーロから300億ユーロに減額し、少なくとも9月まで継続する方針を決めた。2014年6月に導入した「非伝統的な」金融緩和の収束に向けた第一歩だが、低インフレを脱する兆しが見られない中で、緩和政策の修正は慎重に進められよう。
◆BOE(英中銀)は11月2日の金融政策理事会で政策金利を0.25%から0.50%へ引き上げた。2007年7月以来、10年4カ月ぶりの利上げで、消費者物価上昇率がインフレ・ターゲットの上限である前年比+3.0%まで加速したことがその理由である。ただ、早期に追加利上げが決定される可能性は低いだろう。ポンド安と原油高に伴うインフレ圧力はピークアウトしつつあることに加え、Brexit交渉の進展が見られない中、英国経済は一段と下振れするリスクをはらんでいる。
◆世界経済が好調に推移する中、英国経済が取り残されている原因は昨年のEU離脱という決断にある。政治の決定が経済に悪影響を及ぼしているわけだが、ドイツの連立協議の決裂が同様の影響をドイツとユーロ圏経済に及ぼすか、にわかに注目度が高まっている。株安、ユーロ安、金利上昇といった金融市場経由の悪影響はとりあえず生じていないが、ドイツはEU最大の経済規模を有し、政治的なリーダーシップも求められる国であるため、早期の政治の不透明感払拭が望まれる。
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