サマリー
◆11月中旬の現地取材では、10月の小売売上の減速は11月11日の「独身の日」から年末にかけて実施されるネット販売の大セールを前にした「買い控え」が主因であるとの指摘が多かった。一方で、気がかりなのは住宅販売低迷による関連消費への影響である。住宅販売面積は1月~2月の前年同期比23.7%増(以下、変化率は前年比、前年同期比、前年同月比)から減速し、単月では9月に5.7%減と2015年3月以来の前年割れとなり、10月は8.6%減とマイナス幅が拡大している。
◆固定資産投資は1月~3月の9.2%増を直近のピークに減速が続いており、1月~10月は7.3%増となった。単月では3月の9.5%増から10月は3.2%増へと伸び率が大きく低下している。不動産開発投資は住宅販売の鈍化、製造業投資は過剰生産能力削減を目的とした新規投資の抑制など、それぞれ要因があるが、多くの分野に共通するのは、環境規制強化の影響である。5年に一度の党大会の開催年である今年は、統制や党の指導が例年以上に厳しくなされており、環境規制も一段と強化されている。当然、汚染物質を多く排出する一部工場の操業は停止されるが、それだけではなく、砂塵を巻き上げるような一部工事も規制の対象となっており、これはインフラ投資とて例外ではない。
◆今後、11月、12月はネットセールの活況が消費を下支えするが、来年1月~2月にはその反動による減速が想定される。住宅販売不振による関連消費へのマイナスの影響は今後しばらく続く見通しである。さらに、例年以上に厳しい環境規制は来年3月までの固定資産投資や生産の抑制要因となろう。2017年7月~9月の実質GDP成長率は6.8%であったが、これから春までの間に四半期ごとに0.1%ポイント~0.2%ポイントずつ減速していく可能性が高いとみている。2017年の実質GDP成長率は6.8%程度、2018年は6.3%程度となろう。2018年の成長率の低下は、主に住宅販売不振に伴う関連投資・消費の減速によると想定している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
中国:四中全会、関税、そして日中関係悪化
米関税下げで2026年の経済見通しを上方修正、ただし内需は厳しい
2025年11月25日
-
【更新版】中国:100%関税回避も正念場はこれから
具体的な進展は「フェンタニル関税」の10%引き下げにとどまる
2025年11月04日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

