サマリー
◆2017年6月、第2次安倍政権誕生以降で5度目の成長戦略(「未来投資戦略2017-Society5.0の実現に向けた改革-」、以下、未来投資戦略)が公表された。今回の成長戦略を一言で言うと、第4次産業革命の時代に相応しいビジネス環境・人材の育成を全国的に展開していくための成長戦略ということになる。
◆今回の成長戦略のポイントは、「データ・人材」「事後規制」「行政手続きの簡素化・オンライン化」である。公共データのオープン化の促進やデータ流通基盤等の整備に加え、規制の「サンドボックス」制度の創設による事後チェックルールの整備、行政のIT化を進めて2020年3月までに重点分野の行政手続コストを20%以上削減するという目標などが新たに盛り込まれた。
◆既にキャッチアップ段階が終わり、少子高齢社会の加速化と、第4次産業革命、グローバル環境といった不確実性が急激に高まっている日本では、「市場機能を高める制度設計」が最も重要な成長戦略である。多様な企業が試行錯誤しながら新規のビジネス(イノベーション)を起こしやすいように、実験的な事業展開ができるビジネス環境を全国で整備すべきだ。そうした市場機能を発揮させる上では、競争、情報公開、信頼性といった機能を市場に持たせることが極めて重要である。
◆今回の未来投資戦略で示された日本の成長戦略は、まだ旧来型の産業育成の発想が残るものの、規制の「サンドボックス」制度の創設や行政手続きの簡素化・オンライン化など、市場機能を高める政策が取り上げられた点は高く評価できる。その一方で、行政手続の簡素化では改革のスピード感と規模で不十分であり、段階的な改革に留まっている印象を受ける。国内の状況を見るだけでなく、海外の状況を十分勘案した上で、危機感を持った迅速かつ大胆な政策形成が急がれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4月全国消費者物価
エネルギー高対策の補助縮小や食料価格高騰が物価を押し上げ
2025年05月23日
-
AI時代の日本の人的資本形成(個人編)
AI時代を生き抜くキャリア自律に向けた戦略
2025年05月22日
-
2025年3月機械受注
民需(船電除く)は事前予想に反して2カ月連続で増加
2025年05月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日