サマリー
予想されたことではあるが、伊勢志摩サミットに先立って開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議では、世界経済の停滞脱却に向けた明確な政策協調は示されなかった。最近、過度の金融緩和への依存を改め、財政政策の活用を図るべしという考えが主流になりつつあるかに見えるが、各国が自ら財政政策を打つかどうかとなると話は全く変わってくる。金融緩和と財政出動との違いは、為替レートとの関係で、前者は「やったもの勝ち」、後者が「やったもの負け」になりがちなことである。ある国・地域の金融緩和は、通貨の増価を嫌う他国の追随を生みやすい。金融緩和の連鎖(通貨戦争?)を引き起こす上で、明示的な協調などは必要ないということだ。もちろん、自国経済との兼ね合いからこの連鎖に乗れない国もある。例えば現在の米国である。こうした国が通貨高への耐久力を失えば、他国の金融緩和に待ったをかける他はなくなる。米国とすれば、むしろ日欧には財政出動を促し、自国の金利引き上げがもたらすドル高圧力を相殺したいところであろう。一方、財政政策は「やったもの負け」であるが故に、政策協調の下で、皆が一斉にやることが必要なのである。さて、その実現可能性が低下した今、懸念すべきは世界経済の停滞脱却が先延ばしになる可能性が高まったということだけではない。政策協調に向けた音頭をとってきたホスト国日本が、追随者なき財政拡張をひとり行い、円高を惹起し、ひとり負けを演じることである。
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