サマリー
◆日銀短観(2016年3月調査)では、大企業製造業と非製造業の足下の業況感がいずれも大きく悪化し、企業が先行きもかなり慎重に見ていることが明らかになった。この背景としては、海外経済の減速に起因する輸出と生産の停滞や、昨年末以降の円高進行、さらには足下の個人消費の弱さが指摘できる。
◆大企業製造業の「業況判断DI(最近)」は+6%ptと前回(+12%pt)から大きく悪化し、市場コンセンサス(+8%pt)を下回った。大企業非製造業の「業況判断DI(最近)」は+22%ptと前回調査(+25%pt)から悪化し、市場コンセンサス(+23%pt)を小幅に下回った。ただし、大企業非製造業は、これまでの改善ペースが少し速かったことからの調整という色合いが強く、DI水準を考慮すると、必ずしもネガティブに捉える必要はないと考えている。
◆大企業全産業の2015年度の売上高計画は前年度比▲1.6%、経常利益計画は前年度比+3.9%となった。輸出の停滞や個人消費の弱さなどを受けて、売上高と経常利益計画のいずれも下方修正された。特に、これまで増益を見込んでいた大企業製造業において、経常利益計画が大きく下方修正され、減益計画に転じた点が懸念される。大企業全産業の2016年度の売上高計画は前年度比▲0.4%、経常利益計画は前年度比▲2.0%となり、減収経常減益が見込まれる。過去の修正パターンを踏まえると、いずれも弱めの計画だと考える。
◆全規模全産業の2015年度の「設備投資計画(含む土地、除くソフトウェア)」は、前年度比+8.0%と前回(同+7.8%)から小幅に上方修正された。通常の修正パターンよりやや強い結果だと評価できる。大企業全産業の2016年度の「設備投資計画(含む土地、除くソフトウェア)」は、前年度比▲4.8%と減少する計画となり、市場コンセンサス(同▲4.6%)を僅かに下回った。ただし、今回の設備投資計画は例年並みであり、必ずしもネガティブに捉える必要はない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
-
2025年11月全国消費者物価
エネルギー価格の伸び率拡大を食料品価格などの伸び率鈍化が相殺
2025年12月19日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

