ダウントレンドに入った中国の景気対策

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2016年01月22日

  • 小林 卓典

サマリー

2015年の中国は25年ぶりの低い経済成長率に終わったが、主因は製造業の不振にある。製造業からサービス産業への構造転換が中国経済の安定化に寄与するバッファーになっているという見方も可能だが、サービス産業は雇用吸収能力があっても概して生産性は低い。またサービス産業の付加価値の少なからぬ部分が金融業と不動産業によって生み出されていることは、不動産市場の行方次第で中国の成長率が大きく低下する可能性があることを意味する。人民元の下落は製造業の競争力回復にとって好ましいことだが、許容可能な範囲の下落に留めるために人民銀行は大規模な人民買い・ドル売り介入を行っている。その結果、マネタリーベースは減少し続けており、これまでの数次にわたる金融緩和策にもかかわらず、量的には引き締め策と同様の効果がもたらされている。景気回復のために利下げを行えば資本流出が加速し、人民元の下落に対して市場介入を行えば利下げ効果を相殺してしまうというジレンマを政策当局は抱えている。

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