サマリー
◆ユーロ圏では2015年末にかけて雇用の増加や銀行貸出の回復が確認され、内需を牽引役とする緩やかな景気回復が継続したと推測される。消費者と企業の景況感も2015年末まで改善傾向にある。ただし、年初から原油価格の一段の下落、人民元安、中国景気減速懸念などを材料に世界的な株安の連鎖が生じており、これがユーロ圏の景気見通しを不透明にしている。原油安が消費刺激に効果を発揮することはユーロ圏では2015年に証明済みだが、歯止めのかからない原油安による産油国の需要の落ち込み、資源関連会社の業績悪化などのマイナス効果が、このプラス効果を上回ってしまうことが懸念され始めている。また、ECB(欧州中央銀行)にとって原油安は物価下落要因という悩ましい側面がある。マーケットの調整が、ユーロ圏の景況感をどの程度悪化させる要因となるか、特にこれまで強気を維持してきた消費者マインドの行方が注目される。
◆BOE(英中銀)は1月14日の金融政策理事会で、事前予想通り、政策金利を据え置いた。英国では消費主導の経済成長が3年近く続いているが、賃金上昇率の加速は限定的で、消費者物価上昇率はターゲットの前年比+2%を大きく下回って推移している。加えて急速に原油安が進んでいることを受けて、カーニーBOE総裁は2015年半ばに言及した「2016年初めの利上げ判断」は時期尚早として、判断を先送りした。英国でも経済成長を主導する個人消費は堅調に推移しているが、世界経済の先行き不安、原油価格下落に伴う資源会社の業績悪化が懸念されつつある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日