欧州経済見通し 原油安の功罪

消費者マインドは強気を維持できるか

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2016年01月21日

  • 山崎 加津子

サマリー

◆ユーロ圏では2015年末にかけて雇用の増加や銀行貸出の回復が確認され、内需を牽引役とする緩やかな景気回復が継続したと推測される。消費者と企業の景況感も2015年末まで改善傾向にある。ただし、年初から原油価格の一段の下落、人民元安、中国景気減速懸念などを材料に世界的な株安の連鎖が生じており、これがユーロ圏の景気見通しを不透明にしている。原油安が消費刺激に効果を発揮することはユーロ圏では2015年に証明済みだが、歯止めのかからない原油安による産油国の需要の落ち込み、資源関連会社の業績悪化などのマイナス効果が、このプラス効果を上回ってしまうことが懸念され始めている。また、ECB(欧州中央銀行)にとって原油安は物価下落要因という悩ましい側面がある。マーケットの調整が、ユーロ圏の景況感をどの程度悪化させる要因となるか、特にこれまで強気を維持してきた消費者マインドの行方が注目される。


◆BOE(英中銀)は1月14日の金融政策理事会で、事前予想通り、政策金利を据え置いた。英国では消費主導の経済成長が3年近く続いているが、賃金上昇率の加速は限定的で、消費者物価上昇率はターゲットの前年比+2%を大きく下回って推移している。加えて急速に原油安が進んでいることを受けて、カーニーBOE総裁は2015年半ばに言及した「2016年初めの利上げ判断」は時期尚早として、判断を先送りした。英国でも経済成長を主導する個人消費は堅調に推移しているが、世界経済の先行き不安、原油価格下落に伴う資源会社の業績悪化が懸念されつつある。

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