サマリー
中国は人民元を安定させ、元安はとりあえず一服した。中国が資本流出に対してドル売り介入を行い、人民元相場をコントロールすることは今後も可能だ。しかし、8月に突如行った人民元切り下げは、低迷する輸出をテコ入れするという意味では小幅すぎて効果は薄いだろう。一部の経済指標は中国経済の減速に歯止めがかかりつつあることを示唆している。しかし、景気刺激には預金準備率引き下げなど、もう一段の金融緩和が必要であるとすると、資本流出から人民元相場に下落圧力がかかる状況は続くだろう。その際、市場介入によって人民元を管理することを止め、元安の流れを放置した方が、金融緩和の効果は大きくなる。中国が過剰生産能力を解消するため、輸出に活路を見出すのは自然なことであり、現在のように世界貿易が停滞している状況では、なおさら人民元をより大幅に減価させて輸出拡大を図る誘因が強まることになるだろう。資本流出に見舞われている他の新興国にとって、自国通貨の下落は過去の通貨危機の経験に学び、為替管理を柔軟に変えたことによる自然な成り行きとは言え、中国経済の減速の影響をしばらく受けざるを得ない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:景気底入れへ政策総動員
対米ドル人民元レートを切り下げ
2015年08月19日
-
欧州経済見通し 緩やかな景気回復が続く
4-6月期は輸出が久々に牽引役に復帰
2015年08月20日
-
米国経済 堅調な経済と年度末のFOMC
インフレ率を上振れさせるほどではないが内需は堅調
2015年08月20日
-
第186回日本経済予測
中国で「バブル」が崩壊すると何が起きるか?~日本経済は「踊り場」だが「景気後退」は回避される見通し~
2015年08月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日