中国リスクで新興国の動揺が続く
2015年08月24日
サマリー
中国は人民元を安定させ、元安はとりあえず一服した。中国が資本流出に対してドル売り介入を行い、人民元相場をコントロールすることは今後も可能だ。しかし、8月に突如行った人民元切り下げは、低迷する輸出をテコ入れするという意味では小幅すぎて効果は薄いだろう。一部の経済指標は中国経済の減速に歯止めがかかりつつあることを示唆している。しかし、景気刺激には預金準備率引き下げなど、もう一段の金融緩和が必要であるとすると、資本流出から人民元相場に下落圧力がかかる状況は続くだろう。その際、市場介入によって人民元を管理することを止め、元安の流れを放置した方が、金融緩和の効果は大きくなる。中国が過剰生産能力を解消するため、輸出に活路を見出すのは自然なことであり、現在のように世界貿易が停滞している状況では、なおさら人民元をより大幅に減価させて輸出拡大を図る誘因が強まることになるだろう。資本流出に見舞われている他の新興国にとって、自国通貨の下落は過去の通貨危機の経験に学び、為替管理を柔軟に変えたことによる自然な成り行きとは言え、中国経済の減速の影響をしばらく受けざるを得ない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2015年08月19日
中国:景気底入れへ政策総動員
対米ドル人民元レートを切り下げ
-
2015年08月20日
欧州経済見通し 緩やかな景気回復が続く
4-6月期は輸出が久々に牽引役に復帰
-
2015年08月20日
米国経済 堅調な経済と年度末のFOMC
インフレ率を上振れさせるほどではないが内需は堅調
-
2015年08月21日
第186回日本経済予測
中国で「バブル」が崩壊すると何が起きるか?~日本経済は「踊り場」だが「景気後退」は回避される見通し~
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年02月26日
有価証券の評価②
「満期保有目的の債券」の分類基準と評価方法について解説
-
2021年02月26日
2021年1月鉱工業生産
生産指数は春節要因や設備投資の回復を受け3ヶ月ぶりの上昇
-
2021年02月26日
新局面を迎えるナウキャスティング
新型コロナが促すマクロ経済分析へのデータサイエンスの本格的導入
-
2021年02月25日
量的緩和政策下の金融調節
金融調節から非伝統的金融政策を考える②
-
2021年02月25日
コロナ危機と選挙の関係~米欧編~
よく読まれているリサーチレポート
-
2020年12月17日
2021年の日本経済見通し
+2%超の成長を見込むも感染状況次第で上下に大きく振れる可能性
-
2020年12月30日
東証市場再編の概要とTOPIXの見直し
影響が大きそうな流通株式の定義の変更
-
2020年04月13日
緊急経済対策の30万円の給付対象者概要と残された論点
ひとり親世帯や年金を受給しながら働く世帯などに検討の余地あり
-
2020年12月28日
改正会社法施行規則 取締役の報酬等の決定方針
-
2020年08月14日
来春に改訂されるCGコードの論点
東証再編時における市場選択の観点からも要注目