サマリー
◆中国人民銀行(中央銀行)は8月11日以降の3日間で、人民元の対米ドル中間レートを4.7%切り下げた。8月13日に開催された中国人民銀行による記者会見では、「従来、人民元の中間レートと市場レートには3%程度の乖離があった」旨が述べられたが、この乖離は既に解消されている。元安進展は、取り敢えずは一服したと見てよいだろう。この程度の元安では輸出改善効果は極めて限定的である。持続的な元安が回避されれば、訪日中国人の「爆買い」への悪影響も杞憂となろう。
◆今回の措置は、景気の底打ち感がなかなか出ない中、政策を総動員して「7%前後」の成長を維持しようとする中国政府の姿勢を示す狙いがあったのであろう。中国は春先以降、投資・投機を助長しかねない住宅市場刺激策の発表や、地方政府融資平台のプロジェクト継続、今年返済期限を迎える2兆元の地方政府債務の地方債(低利・中長期)への置き換え、などなりふり構わない景気下支え策を講じている。為替面でも「何か」をすることに意義があったのかもしれない。
◆2015年1月~7月も固定資産投資は減速が続いたが、その内訳からはダウンサイド・リスクの低下を示す変化を見出すことができる。鉱業投資は前年同期比6.5%減となったが、1月~5月の同9.1%減を底にマイナス幅が縮小するなど、最悪期を脱した可能性がある。不動産開発投資の先行指標である住宅販売金額は、1月~2月の同16.7%減をボトムに1月~7月には同16.8%増へ回復。販売と投資のタイムラグは6ヵ月~9ヵ月程度であり、不動産開発投資は近いうちに底打ちして、その後は回復していく可能性が高い。不動産開発投資は固定資産投資の18.2%を占めているほか、不動産関連の裾野産業は広い。景気底打ちの原動力の一つとして、今後の不動産開発投資の動向が注目される。
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