サマリー
◆足下の日本経済はこれまでの拡大傾向が一服しているが、企業収益は極めて高い水準での推移が続いている。こうした良好な企業収益を背景として、設備投資の拡大や、雇用環境の改善を背景とした消費の回復などに代表される「経済の好循環」はどのような形で進展していくのだろうか。その答えを探るべく、本稿では業種別・規模別で見た企業の利益分配を分析し、賃金・設備投資の先行きを検討する。
◆雇用不足感が特に強い中小企業非製造業は労働分配率が高く、人件費の増加が収益を圧迫する要因になるとみられる。加えて、設備投資の企業収益に対する弾性値が大きいことから、人件費負担の増加が企業収益の減少を経由して設備投資を抑制する可能性が高い。
◆一方、大企業非製造業では、雇用不足感が強く人件費の増加圧力は高まっているものの、労働分配率の水準が低いため、収益を経由した設備投資の押し下げは限定的なものになるとみられる。また、大企業製造業では人件費負担の増加が設備投資を抑制する可能性は低い。マクロで見た設備投資は増加基調が続くとみられるが、その中心は大企業、とりわけ製造業になるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
次世代型企業研修の最前線
対話型AIやメタバースを活用した人的資本形成の効率化・高度化
2025年11月10日
-
2025年9月消費統計
衣料品など半耐久財が弱く、総じて見れば前月から小幅に減少
2025年11月07日
-
人手不足下における外国人雇用の課題
労働力確保と外国人との共生の両立には日本語教育の強化が不可欠
2025年11月06日

