サマリー
◆足下の日本経済はこれまでの拡大傾向が一服しているが、企業収益は極めて高い水準での推移が続いている。こうした良好な企業収益を背景として、設備投資の拡大や、雇用環境の改善を背景とした消費の回復などに代表される「経済の好循環」はどのような形で進展していくのだろうか。その答えを探るべく、本稿では業種別・規模別で見た企業の利益分配を分析し、賃金・設備投資の先行きを検討する。
◆雇用不足感が特に強い中小企業非製造業は労働分配率が高く、人件費の増加が収益を圧迫する要因になるとみられる。加えて、設備投資の企業収益に対する弾性値が大きいことから、人件費負担の増加が企業収益の減少を経由して設備投資を抑制する可能性が高い。
◆一方、大企業非製造業では、雇用不足感が強く人件費の増加圧力は高まっているものの、労働分配率の水準が低いため、収益を経由した設備投資の押し下げは限定的なものになるとみられる。また、大企業製造業では人件費負担の増加が設備投資を抑制する可能性は低い。マクロで見た設備投資は増加基調が続くとみられるが、その中心は大企業、とりわけ製造業になるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
-
2025年11月全国消費者物価
エネルギー価格の伸び率拡大を食料品価格などの伸び率鈍化が相殺
2025年12月19日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

