サマリー
◆日銀短観(2014年12月調査)は、景気回復の遅れを反映して、企業の業況感が足踏み状態にあることを再確認させる内容であった。先行きについては、大企業と中小企業のいずれも悪化を見込んでおり、企業は今後の経営環境について慎重にみているようだ。
◆大企業製造業の「業況判断DI(最近)」は+12%ptと前回(+13%pt)から悪化し、市場コンセンサス(+13%pt)を小幅に下回った。日本銀行が10月末に「量的・質的金融緩和」の拡大を決定してから円安や株高が進んだため、それが大企業製造業(特に加工)の業況判断を押し上げると期待されたが、総じてみると、押し上げ効果はかなり限定的なものに留まったと考える。加工業種では、堅調な国外の設備投資需要や円安などを背景に、「生産用機械」の業況判断DIは堅調に推移している。
◆大企業非製造業の「業況判断DI(最近)」は+16%ptと前回調査(+13%pt)から改善し、市場コンセンサス(+13%pt)からも上振れした。業種別に見ると、消費税増税後に落ち込んだ住宅着工に持ち直しの兆しが出てきたことから、「不動産」と「建設」の業況感が改善した。また、海外旅行客や出張者の増加などを追い風に、「宿泊・飲食サービス」が3四半期ぶりに改善した。
◆2014年度の大企業全産業の売上計画は、前年度比+2.0%と前回調査(同+1.8%)から小幅に上方修正され、5年連続の増収になる見込みである。大企業全産業の経常利益計画は前年度比+1.6%となり、前回調査の減益見通し(同▲3.0%)から一転して、3年連続の増益を見込む。経常利益は、昨年度に大きく伸びた反動で今年度は小幅な減益になるとみられていたが、企業の収益環境は思った以上に底堅いと評価できる。
◆大企業全産業の2014年度の「設備投資計画(含む土地、除くソフトウェア)」は、前年度比+8.9%となり、市場コンセンサス(同+8.1%)を上回った。GDP統計における実質設備投資は、2四半期連続の減少となったものの、日銀短観の結果からは、企業の設備投資意欲は引き続き堅調だと評価できよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年5月全国消費者物価
米価格の上昇が他の食料品や外食など関連品目の価格にも波及
2025年06月20日
-
2025年5月貿易統計
輸出数量は横ばい圏を維持も、円高効果等で輸出額は8カ月ぶりに減少
2025年06月18日
-
2025年4月機械受注
民需(船電除く)は減少し、コンセンサス通りの結果だった
2025年06月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日