サマリー
◆安倍政権の経済政策に関する3本目の矢である成長戦略は、「日本産業再興プラン」「戦略市場創造プラン」「国際展開戦略」の3つのアクションプランで構成されている。
◆今回の成長戦略を全体的に見ると、対象企業・業種を限定したターゲティングポリシー的なメニューが多く並んでいる。あらゆる企業に恩恵が及び、かつ、企業の自由な活動を支援していくようなルールベースの政策へと移行すべきである。
◆一方で、女性労働力や労働移動支援助成金の活用、国家戦略特区の創設、原子力発電所の条件付再稼働、TPP を含む貿易のFTA 比率を大幅に高める戦略や対内直接投資残高の倍増といった国際展開戦略などは、積極的に評価したい。これらはうまくやれば、日本の経済成長を高める起爆剤となりうる。
◆安倍政権下の経済財政諮問会議で4年ぶりに策定された骨太の方針は、財政規律を緩めないという姿勢を堅持したことは評価したいが、その具体的な方策や手順については、閣議決定されたのが参院選前という事情もあってか、踏み込み不足が否めない。
◆現在の日本の財政赤字は、社会保障関係費の膨張と絶対的な税収不足が原因である。年金・医療・介護について踏み込んだ社会保障費抑制に関する議論が行われることを強く望みたい。また、安定的な税収を確保するための課税ベースの拡大と消費税のさらなる引き上げ、なおかつ、成長戦略と整合性のある法人税の削減といった議論を行わなければならない。これらを行うには本格的な税制改革論議が必要だ。
◆経済・社会の構造調整を政治だけに頼るのではなく、市場の力を通じて調整を進めるようなシステムを強化していくことも必要である。新陳代謝を促して企業の競争力を高めていくシステムと同時に、構造調整に伴う痛みを緩和するセーフティネットも備えた「質の高い市場制度」を政府が構築していくことが重要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
消費データブック(2025/12/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年12月02日
-
2025年7-9月期法人企業統計と2次QE予測
AI関連需要の高まりで大幅増益/2次QEでGDPは小幅の下方修正へ
2025年12月01日
-
高市政権における実質賃金上昇の鍵は?
政策・改革の推進で40年度までの実質賃金は年率1.2~1.6%程度に
2025年12月01日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/12/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年12月02日
-
「年収の壁」とされる課税最低限の引上げはどのように行うべきか
基礎控除の引上げよりも、給付付き税額控除が適切な方法
2025年12月02日
-
2025年7-9月期法人企業統計と2次QE予測
AI関連需要の高まりで大幅増益/2次QEでGDPは小幅の下方修正へ
2025年12月01日
-
「2030年に女性役員比率30%」に向けた課題
TOPIX500採用銘柄における現状、変化、業種別の傾向等の分析
2025年12月01日
-
なぜ今、ベトナム市場なのか:外国人投資家が注目する理由
2025年12月01日

