サマリー
◆1-3月期GDPでは実質輸出が4四半期ぶりの増加に転じた。輸出が持ち直した背景としては、昨年11月に衆議院の解散が事実上決まってからの、急速な円安が挙げられることが多い。しかし、このところ為替市場では、昨年末からの一本調子の円安が反転し、円高・ドル安方向に戻されていることから、円安による景気の押し上げ効果は既に一巡したと見る向きも少なくない。そこで、本稿では昨年末からの円安の効果がどの程度顕在化しているか、また今後どのような効果が期待されるかを考察する。
◆輸出金額の推移を見ると、2012年初頭から減少傾向が続いていたが、2012年10月を底に明確な持ち直し傾向となっている。これを価格と数量に分けてみると、円安進行と同時に輸出価格が大幅に上昇したことが、輸出金額を押し上げてきたことが確認できる。一方、円安による収益の改善を原資に輸出価格を引き下げ、価格競争力を高めるという行動は、少なくとも1-3月期まではほとんどみられなかった。
◆値下げによる輸出競争力の向上が本格化するのはこれからであると考えられる。為替変動が輸出数量に効果を与えるまでのタイムラグを考慮した輸出数量関数を推計すると、昨年末からの急激な円安の効果は、円安基調に転じて半年程度が経過したこれから本格的に発現するという結果が得られる。仮に為替レートが90円/ドルで推移すると仮定しても、これまでの円安効果が、少なくとも年末頃までは輸出数量を押し上げる。輸出数量は当面増加基調で推移する公算が大きく、設備投資などの国内経済への波及効果も今後一層拡大するとみられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
消費データブック(2025/5/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年05月02日
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
-
2025年3月鉱工業生産
自動車工業や電気・情報通信機械工業など10業種が前月から低下
2025年04月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日