サマリー
日銀はインフレ・ターゲットを導入したものの、金融政策の枠組み自体が変わったわけではない。物価目標の設定はゴールではなく、政府と日銀がその実現のためにどう行動するかが問題である。
デフレの構造的な要因を長期的に物価の趨勢を決める単位労働コストの背景から整理すると、デフレ脱却には金融緩和のもとで企業の収益基盤を強化しつつ、企業の再生や再雇用が円滑に行われるセーフティネットを構築することが重要である。
金融緩和は不可欠であるが、大胆な金融緩和には副作用があり、政府が財政健全化の見通しを立てていない中で積極的な金融緩和を行うリスクは決して小さくない。メリットとデメリットを慎重に判断しつつ大胆に緩和するという難しい舵取りが求められる。政策運営面では、CPIだけでなく家計最終消費支出デフレーターも採用することを提案したい。
円安が長期間続いたとしても物価が上昇するまでにはかなりの時間を要する。また、円安から円高方向へ反転すれば、景気の振幅が高まってインフレ目標の達成時期がむしろ遠ざかる可能性がある。

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年10月貿易統計
トランプ関税の悪影響が継続。今後は米中リスクにも警戒が必要
2025年11月21日
-
2025年10月全国消費者物価
サービス価格や耐久消費財価格の上昇が物価上昇率を押し上げ
2025年11月21日
-
中国の渡航自粛要請は日本の実質GDPを0.1~0.4%下押し
今後は対中輸出などへの波及に要注意
2025年11月21日

