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超高齢日本の30年展望

持続可能な社会保障システムを目指し挑戦する日本—未来への責任

2013年05月14日

名誉理事 武藤 敏郎

政策調査部 政策調査部長 鈴木 準

経済調査部 シニアエコノミスト 近藤 智也

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

サマリー

◆日本を長期展望すると、実質GDP成長率は2010年代1.5%、2020年代1.5%、2030年代1.0%と見込まれる。これはマンアワー生産性が2010年代1.7%、2020年代1.8%、2030年代2.0%の経済。先行き約30年間を均すと、名目賃金は2.5%程度、消費者物価は1.5%程度で上昇しよう。経常収支対GDP比は、2010年代1.3%、2020年代0.7%、2030年代▲0.2%の予想。貿易赤字が恒常化する中で所得収支の黒字がそれを埋め合わせる構造へ変化し、長寿国日本にとって対外資産の運用が問われていく。


◆世界経済は、著しく高齢化する中国のプレゼンスが低下し、経済の中心は依然として米国であり続けるだろう。その米国経済についても保守的な視点にたって展望すると、世界経済成長率は2010年代3.8%、2020年代3.6%、2030年代2.6%が見込まれる。翻って日本では、女性にみられるM字カーブの解消や高年齢者の労働力率向上が望まれる。なお、安定的な電力供給の必要性に鑑みると、エネルギーの多様化が重要である。今後の電源ミックスにおいては拙速ではない減原発シナリオが現実的である。


◆成長戦略においては、貿易だけでなく投資や人材を含めた海外との相互関係強化や、市場メカニズムを活かせるような質の高い市場制度が必要である。政府は市場と補完し合う関係にあり、大きいか小さいかではなく機能するかどうかが重要である。民間活力を引き出し、骨太な日本経済を再構築しようという成長志向の強い政権のさらなる政策展開に期待したい。グローバル経済が一歩ずつではあるが改善に向かっており、国内経済にも明るさがみられてきた現在は、先送りされがちな構造改革を前進させる好機である。


◆政府の社会保障給付費は、2020年代は横ばいで推移するが2030年代になると再び増加すると予想される。現行制度のままでは、2040年度末の名目政府債務は約2,700兆円、GDP比約280%となり、実質的な財政破綻の道を辿ると見込まれ、国債市場の動向を注視すべき状況が続く。予定された消費税増税を着実に実施することをはじめ、遅くとも2020年代のうちに超高齢社会に相応しい社会保障制度を構築する必要性は極めて高い。社会保障制度や財政の改革に取り組む機運の一層の強まりが期待される。


◆年金支給開始年齢引上げやマクロ経済スライド、医療における自己負担割合の引上げ、後発医薬品の普及などについてマクロ経済との相互作用を考慮したシミュレーションを実施した。成長戦略の展開を想定しつつもそれら給付削減策や消費税率の引上げを見込む改革シナリオでは、成長率はベースシナリオから0.2%pt程度低下するが、社会保障制度や財政の破綻を回避できる。必要な改革に挑戦すれば、超高齢化の中で経済成長を実現しつつ、社会保障システムを維持できる。


◆給付削減や国民負担増だけで政府の基礎的財政収支を構造的に黒字化させるシナリオの提示が容易でないことも事実。超高齢化問題の取扱いを誤れば国民生活が破綻へ向かうリスクがあることを、緊張感をもって再認識すべきだ。政府債務残高GDP比を引き下げるためには、政府による給付をより限定する一方で、民間部門の知恵を導入し民間経済の活力が高まる状況が実現されなければならない。個々の政策の実行可能性や望ましい選択肢の検討は別途必要だが、超高齢社会における高齢者向け社会保障のすべてを政府が担えない以上、民間部門の役割を高めるようないわば“超”改革シナリオを目指す発想が求められる。未来への責任として改革志向を停滞させてはならない。

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