サマリー
◆【概況】輸出が4ヶ月連続のマイナス:2012年1月の貿易統計は、輸出が大きく落ち込み、貿易収支が過去最大の赤字額になるなど、先行き不透明感が払拭されない内容であった。輸出金額は前年比▲9.3%と市場コンセンサスを僅かに上回ったものの、4ヶ月連続のマイナスとなり、減少幅も拡大した。ただし、前月のレポートで指摘したように、アジア地域の旧正月の影響が輸出に対してマイナスに作用した可能性が高いため、今回の輸出の落ち込みは幾分割り引いて評価する必要があると考えている。貿易収支は▲1兆4,750億円と4ヶ月連続の赤字となり、2009年1月の▲9,679億円を上回って、過去最大の赤字額を記録した。
◆【地域・品目別動向(名目)】春節の影響でアジア向けが急減:主要品目別の輸出金額をみると、「電気機器」、「一般機械」、「化学製品」の減少が目立った。輸入については、代替燃料の需要増加と価格高止まりを背景に、「液化天然ガス」の輸入金額が前年比+74.3%、輸入数量が同+28.2%と揃って大幅に増加した。主要国・地域別の輸出金額は、米国向けが前年比+0.6%(12月、同+3.9%)、EU向けが同▲7.7%(12月、同▲12.7%)、アジア向けが同▲13.7%(12月、同▲11.7%)となった。
◆【今後の見通し】輸出は横ばい圏が続く:輸出は、海外経済の減速が重石となり、横ばい圏で推移すると考える。EU向け輸出は、欧州の財政・金融問題の影響が実体経済に顕在化しているため、弱めの動きが続く公算である。世界景気と為替に基づく当社の輸出数量指数の推計値に下げ止まりの兆しが出始めている。そのため、欧州問題が一段と深刻化しなければ、底堅く推移している米国経済や、金融緩和姿勢を強めている新興国経済が支えとなり、日本の輸出も徐々に持ち直していくと考えられる。円ドルレートについて単純な回帰式を用いて推計すると、経常収支の影響は為替レートに対してすぐに顕在化するのではなく、ラグを伴って作用する結果が得られた点には留意したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
-
一億自己啓発社会の死角
データが示す、転職志向・子育て・ジェンダーにおける格差
2025年09月05日
-
2025年7月消費統計
需要側統計は強いが供給側は弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年09月05日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日