サマリー
◆【概況】輸出が3ヶ月連続のマイナス:2011年12月の貿易統計は、輸出の足踏みや貿易赤字の継続など、先行き不透明感が残る内容であった。輸出金額は前年比▲8.0%と3ヶ月連続のマイナスとなり、市場コンセンサスを下回った。輸入金額は、前年比+8.1%と24ヶ月連続のプラス。この結果、12月の貿易収支は▲2,051億円と3ヶ月連続の赤字となり、2011年通期の貿易収支は▲2兆4,927億円と第2次石油ショック後の1980年以来の赤字を記録した。
◆【地域・品目別動向(名目)】品目別は幅広くマイナス:品目別の輸出金額では、大分類すべてがマイナスとなり、「電気機器」、「一般機械」、「化学製品」は弱含み傾向が続いた。輸入については、代替燃料の需要増加と価格高止まりを背景に、「液化天然ガス」の輸入金額と輸入数量が揃って大幅に増加した。主要国・地域別の輸出金額は、個人消費が底堅く推移している米国向けが2ヶ月連続のプラスとなった一方で、財政問題の緊張が続くEU向けと景気の減速感が顕在化してきたアジア向けが弱含んだ。
◆【今後の見通し】輸出は横ばい圏が続く:輸出は、海外経済の減速が重石となり、引き続き横ばい圏で推移すると考える。欧州財政問題が一段と悪化しなければ、底堅く推移している米国経済や金融緩和姿勢を強めている新興国経済が支えとなり、日本の輸出も徐々に持ち直していくとみてい。タイの大洪水の影響に関しては、当社のこれまでの見方どおり輸出全体への影響は深刻化・長期化しないと想定する。
◆ 【貿易収支のポイント】輸出サイドが当面の鍵:貿易収支の先行きについては、輸入価格の高止まりと海外経済の減速による輸出鈍化を踏まえると、貿易赤字の改善ペースは引き続き緩慢なものに留まると予想する。震災後に貿易赤字幅が一旦縮小した後に再び赤字幅が拡大したのは、輸出の鈍化によるところが大きいことから、当社では、貿易赤字脱却の鍵は輸出サイドにあると考えている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日