サマリー
◆ユーロ圏の2025年1-3月期の実質GDP成長率(速報値)は、前期比+0.4%(前期比年率+1.4%)となった。前期並みの伸びを見込んでいた市場予想(Bloomberg調査、前期比+0.2%)に反して成長率は加速しており、想定以上に底堅い結果であった。
◆国別の内訳を見ると、ユーロ圏20ヵ国のうち成長率が公表された11ヵ国全てがプラス成長となった。前期にマイナス成長だったドイツ(前期比+0.2%)、フランス(同+0.1%)もプラス成長に転じており、ヘッドラインの上振れに加えて、内容も良好である。
◆既に需要項目別の内訳が公表されたフランスでは、外需寄与度がマイナスとなる一方、内需のプラスがGDPの押し上げ要因となった。もっとも、内需の増加の大半は在庫変動によるものであり、国内最終需要は力強さに欠ける。一方、スペインは内需、外需の双方がプラス寄与となりバランスの取れた成長となった。ドイツについては、まだ内訳の計数は公表されていないが、個人消費、および総資本形成の増加が報告されている。ユーロ圏全体でも、外需が足を引っ張る一方、内需、とりわけ個人消費の増加がGDP押し上げに寄与したと推察される。
◆1-3月期のGDP統計では、ユーロ圏経済の緩やかな成長トレンドが確認されたが、4月以降は下振れリスクが大きくなっている。米国の追加関税によって対米輸出のみならず、中国向けなど米国以外の国に向けた輸出も下振れしかねない。また、金融市場の乱高下や、家計・企業のマインド悪化による消費・投資の停滞など、様々な経路で貿易摩擦がユーロ圏経済の下押し要因になるとみられる。4月の景況感指数(総合)は2024年12月以来の低さとなり、4-6月期の成長鈍化を示唆するが、さらなる悪化への警戒が必要だろう。
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