サマリー
◆ユーロ圏の2024年1-3月期の実質GDP成長率(改定値)は前期比+0.3%と、3四半期ぶりのプラス成長に転じ、2023年後半に陥ったテクニカルリセッションを脱したことが確認された。鉱工業は引き続き苦戦を強いられる一方、サービス業の堅調さがプラス成長転換に寄与したとみられる。
◆景況感指数などを見る限り、4月以降も鉱工業が停滞、サービス業が堅調という構図が続いている。サービス業の好調さは雇用の拡大に繋がりやすく、雇用者数の増加が財消費の増加、鉱工業の生産拡大に繋がるか否かが、今後のユーロ圏経済の拡大ペース、および景気拡大の持続性を占う上でのカギとなる。
◆ユーロ圏の4月のHICPは前年比+2.4%と3月と同程度の伸びであったが、ECBが注目するサービス価格の伸びは前月から縮小しており、6月にもECBは利下げに踏み切る可能性が高い。金融政策における焦点は、その後の利下げペースへと移りつつあるが、なおもインフレ率高止まりに対する警戒感が払しょくされていないこと、利下げ開始後は利下げの効果の見極めが必要になることから、ECBは四半期に1回の緩やかなペースで利下げを進めていくと予想する。
◆英国の1-3月期の実質GDP成長率は前期比+0.6%と市場予想(Bloomberg調査:同+0.4%)を上回る良好な結果となった。ユーロ圏と同様に、英国も3四半期ぶりのプラス成長となり2023年後半のテクニカルリセッションから脱した形だが、成長の勢いは想定外に英国の方が強かった。
◆4月に入ってエネルギー上限価格の引き下げを主因にCPIの伸びが大きく鈍化したことは、個人消費を押し上げるとみられ、英国経済の拡大は4-6月期以降も続くと見込まれる。ただし、4月のインフレ率はサービス価格を中心にBOEの予想を上回っており、BOEの利下げ開始にはもうしばらく時間が掛かる見込みである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日