サマリー
◆ユーロ圏の2024年1-3月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比+0.3%と、3四半期ぶりのプラス成長に転じた。これによって、ユーロ圏は2023年後半に陥ったテクニカルリセッションを脱したことになる。プラス成長への転換は想定通りだが、プラス幅は市場予想(Bloomberg調査、同+0.1%)を上回り、ポジティブな結果であった。
◆国別では、速報段階で成長率が公表される10ヵ国全てがプラス成長となった。成長が一部の国に偏ったものではなく多くの国に広がっている点も、ヘッドラインの上振れに加えて好材料である。なお、主要4ヵ国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)の全てが市場予想を上回る結果となったこともポジティブサプライズである。
◆4-6月期に入ってからのユーロ圏経済の動向に関して、景況感指数(総合、欧州委員会発表)を確認すると、4月は前月差▲0.6ptと2ヵ月ぶりの低下に転じ、低調なスタートとなった。もっとも、ユーロ圏経済を取り巻く環境は着実に改善しつつある。インフレ率の鈍化によって実質賃金は増加に転じており、これは所得と消費者マインドの両面から個人消費を押し上げるとみられる。
◆ECBは2024年6月にも利下げを開始する可能性が高く、借入コストの低下は、個人消費や投資を後押しすることになろう。ユーロ圏経済は、年後半にかけて成長ペースが緩やかに加速していくという従来の見通しに変更はない。
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