サマリー
◆9月21日、ロシアのプーチン大統領は国内向けのテレビ演説で、ロシアのウクライナでの特別軍事作戦(special military operation)に関し、予備役など国民を部分的に動員することを発表した。ロシア国民及び経済を戦時下に置く措置である。また、西側諸国が示すロシア領土への脅威に対応できる多くの武器があることを訴え、核兵器による報復措置をちらつかせるなど、強硬姿勢を示し紛争の大規模なエスカレーションを図っている。
◆プーチン大統領は演説にて、ウクライナでのロシア占領地域における住民投票の実施を支持するとも述べた。前日にロシア占領下にあるウクライナの4地域の行政当局が、9月23日(金)からロシアへの併合の是非を問う住民投票実施の予定を発表した。住民投票の結果、予想通りロシア併合が支持されれば、ロシア領土となる。それ以降に、西側諸国が供与する武器を用いてウクライナがこれら地域を攻撃すれば、ロシアが自国とみなす領土への攻撃となる。ロシアでは領土への侵略は、自衛のためにあらゆる手段を使うことのできる犯罪と考えられており、核兵器の使用もその手段の一部と認識されている。このため、ロシアは特別軍事作戦から、本格的な戦争へと突入する用意があることを示したことになる。
◆ショイグ国防相の声明によれば、動員対象は予備役であり、徴兵ではないという。28歳以上の兵士30万人が動員されることになるが、国防相は、軍務や戦闘経験を持ち、軍務に必要な軍事専門知識を持つ人が対象になると説明している。ただし予備役は一般企業に勤めている市民などが殆どであり、いつ召集されてもおかしくない恐怖につきまとわれるため、国民は動揺を隠せずにいる。9月21日には召集令状を受け取った予備役の出国が禁止されたため、令状が届くまでにと出国を急ぐ人が増えているのが実情である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日