サマリー
◆ロシアのウクライナ侵攻が半年に及び、さらに長期化すると予想される中で、今後の焦点は、2022年後半から2023年にかけてどれだけ景気が減速するかであろう。高インフレに、人手不足や水不足等がサプライサイドの問題の解消を難しくし、そしてエネルギー供給への懸念が、企業の生産活動や家計の消費行動に重くのしかかる。利上げ(金利上昇)という要因も加わった。企業の景況感(特に先行き)や消費者マインドは一段と悪化しており、積極的な投資や消費は想定しづらい。
◆ECBは11年ぶりに利上げに踏み切ってマイナス金利を脱したが、他の先進国に比べると金融引き締めが後手に回った印象は拭えない。利上げ観測の高まりとともに、ユーロ圏内の脆弱な国々とドイツの長期金利のスプレッドが拡大しており、イタリア等、脆弱な国々の経済への打撃が懸念される。ECBは、景気減速に配慮しつつ、インフレ抑制のための利上げと同時に市場分断化阻止の対応も迫られている。ECBは、2022年後半から2023年1-3月期にかけて利上げを継続すると予想する。一方、景気が低迷する中、インフレ率がピークアウトしていく2023年4-6月期以降は、金利を据え置くと見込む。
◆英国経済は、ユーロ圏の抱えるマイナス面を凝縮した形になっている。ECBよりも半年以上前に利上げに転じたBOEが示した直近のインフレ見通しはユーロ圏よりも高く、景気見通しはユーロ圏よりも低い。つまり、スタグフレーションの可能性を示唆しており、ジョンソン首相の後任のリーダーは難しい舵取りを迫られよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
-
欧州経済見通し 「トランプ」が欧州連帯を促す
貿易摩擦激化の可能性が高まる一方、国防費の増加議論が急展開
2025年03月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日