サマリー
◆新たな変異株(オミクロン株)が正式に報告される以前の10月半ばから、欧州各国では新型コロナウイルス(以下、コロナ)の新規感染者が急増していた。欧州各国は、とりあえず、マスク着用を再び義務化し(ウィズ・マスク)、ワクチンの追加接種を加速させている。だが、それでも感染拡大は抑制できず、全国的なロックダウンに踏み切る国も出てきた。
◆これまで、「2020年よりも素敵なクリスマス」を重視して各国政府は取り組んできたが、国民に不人気な政策を取らざるを得ない状況に追い込まれている。ワクチン接種の進展によって入院患者(重症者)や死亡者の水準は抑制される等、1年前とは異なるものの、行動制限措置の適用範囲や内容が強化されており、新年のスタートは出鼻を挫かれた格好だ。
◆2021年を振り返ってみれば、ワクチン接種が想定以上に進んだために経済の正常化が本格的に進み、ユーロ圏全体では、コロナ禍前の水準回復が視野に入っている。1年前に想定されたシナリオの中では、アップサイドシナリオに近い状況が実現しつつある。2022年を展望するにあたり、標準シナリオでは、サプライサイドの混乱が緩和され、世界的な需給のアンバランスも解消に向かい、エネルギー価格の上昇も止まることが見込まれている。
◆コロナ禍で実施された政策対応の出口戦略に取り組むことが、1年前とは大きく異なる点である。中央銀行(ECBやBOE)は、スピード感に大きな違いがあるものの、既に出口戦略の方向に舵を切っている。だが、引き続き、コロナ感染の先行きは欧州経済にとってマイナスの不透明要因であり、各国政府や金融当局は、悩ましい状況に直面することになるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
-
欧州経済見通し 「トランプ」が欧州連帯を促す
貿易摩擦激化の可能性が高まる一方、国防費の増加議論が急展開
2025年03月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日