2022年の欧州経済見通し
コロナ感染次第の状況が続く中で、金融・財政政策の変化に備える
2021年12月21日
サマリー
◆新たな変異株(オミクロン株)が正式に報告される以前の10月半ばから、欧州各国では新型コロナウイルス(以下、コロナ)の新規感染者が急増していた。欧州各国は、とりあえず、マスク着用を再び義務化し(ウィズ・マスク)、ワクチンの追加接種を加速させている。だが、それでも感染拡大は抑制できず、全国的なロックダウンに踏み切る国も出てきた。
◆これまで、「2020年よりも素敵なクリスマス」を重視して各国政府は取り組んできたが、国民に不人気な政策を取らざるを得ない状況に追い込まれている。ワクチン接種の進展によって入院患者(重症者)や死亡者の水準は抑制される等、1年前とは異なるものの、行動制限措置の適用範囲や内容が強化されており、新年のスタートは出鼻を挫かれた格好だ。
◆2021年を振り返ってみれば、ワクチン接種が想定以上に進んだために経済の正常化が本格的に進み、ユーロ圏全体では、コロナ禍前の水準回復が視野に入っている。1年前に想定されたシナリオの中では、アップサイドシナリオに近い状況が実現しつつある。2022年を展望するにあたり、標準シナリオでは、サプライサイドの混乱が緩和され、世界的な需給のアンバランスも解消に向かい、エネルギー価格の上昇も止まることが見込まれている。
◆コロナ禍で実施された政策対応の出口戦略に取り組むことが、1年前とは大きく異なる点である。中央銀行(ECBやBOE)は、スピード感に大きな違いがあるものの、既に出口戦略の方向に舵を切っている。だが、引き続き、コロナ感染の先行きは欧州経済にとってマイナスの不透明要因であり、各国政府や金融当局は、悩ましい状況に直面することになるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年07月07日
低・脱炭素経済に向けた移行計画
~企業に求められるサステナビリティと事業戦略の融合~
-
2022年07月05日
市場制度ワーキング・グループ 中間整理
持続的な経済成長を実現し、成果を家計へ還元する資本市場の諸施策
-
2022年07月05日
ロシア国債デフォルト騒動の本質
返済能力も意思もあるロシア政府は徹底抗戦の構え
-
2022年07月04日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
-
2022年07月07日
何故ロシアの貿易黒字の拡大は「終わりの始まり」なのか?
よく読まれているリサーチレポート
-
2022年05月06日
FOMC 0.50%ptの利上げとQTの開始を決定
少なくとも7月のFOMCまでは毎回0.50%ptの利上げが続く見込み
-
2022年05月25日
日本のインフレ展望と将来の財政リスク
コアCPI上昇率は2%程度をピークに1%弱へと低下していく見込み
-
2022年05月24日
日本経済見通し:2022年5月
経済見通しを引下げ/サービス消費等の「伸びしろ」が景気を下支え
-
2022年05月16日
ウクライナ危機による資源高の影響
短期的には家計が2.0兆円、企業が2.6兆円の負担増に
-
2022年06月08日
第213回日本経済予測(改訂版)
インフレ高進・ウクライナ危機下の世界経済の行方①日インフレ、②米景気後退リスク、③世界的供給問題、を検証