サマリー
◆6月を通じて、新型コロナウイルスの新規感染者が順調に減少し、欧州各国はそれぞれのペースで行動制限措置の緩和・解除を進めてきた。その結果として、制限つきながら、大規模なイベントUEFA EURO 2020の試合が欧州各地で行われた。だが、6月末頃から感染者が増加に転じ、感染拡大ペースが速い国では再び制限強化を実施し始めている。
◆経済の正常化が進み、成長が加速していくというシナリオの確度が高まっていくと、ユーロ圏各国の置かれている経済環境の違いが鮮明になっていこう。短期的には、物価上昇圧力が高まることから、ECBの金融政策の舵取りが注目される。
◆変異株(デルタ株)の感染者が急増しているにもかかわらず、感染者の推移と入院患者・死亡者の推移の連動性は薄れたとして、政府による制限を解除して個人の責任に大きく舵を切ったのが英国(イングランド)である。とはいえ、完全にリンクが切れたわけではないため、このまま感染者が“爆増”していけば、入院患者の増加は避けられず、徐々に医療体制を圧迫していくだろう。
◆“今やらずしていつ(制限解除を)やるか(if not now, when?)”というジョンソン首相の掛け声のもと、ワクチン先行国ゆえに可能になった壮大な実験(ギャンブル)に挑戦する。願わくは、EURO 2020のイングランド優勝のオッズよりも低くなりますように。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日