コロナ第2波の中、英国とEUとの協定交渉は最終局面に

バイデン大統領誕生もジョンソン首相の強硬姿勢には影響なし、ポピュリズムは健在

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2020年11月17日

サマリー

◆離脱協定の一部を英国閣僚が無効にすることを可能とする条項を含む国内市場法案を提出したジョンソン政府の姿勢に、アイルランド系の出自を非常に誇りにしているバイデン次期大統領は警戒を隠さない。11月9日、英国上院は当該条項を国内市場法案から排除するかどうかを巡る採決を行い、賛成票433対反対票165と、ここ数年における最大票差で英国政府の敗北となった。それでも、ジョンソン首相は一歩も引く様子を見せず、12月上旬に同法案が下院に戻ってきた際に、それまでにEUとの将来的な関係性を巡る協定が妥結されていない限り、同法案の可決に向けてまい進するとともに、上院での採決を覆す意向を示している。

◆英国政府によれば、漁業権や公平な競争条件に関する未解決事項が解消するかどうか不透明という。ただ、これらの主要争点を除き、約1,800ページの協定草案はほぼ完成している。しかし、合意文書の精査や翻訳などに必要な日数も考慮すると、合意したとしても、欧州議会に提出されるまでには数週間はかかるとみられている。そのため現実的には、11月23日~26日の欧州議会本会議で協定草案を批准する作業に取り掛かることは難しく、12月14日~17日の欧州議会本会議まで協定批准を引き延ばす可能性を検討している。ただ交渉がさらに長引けば、それ以降の週に臨時本会議を開催することも検討される可能性があるという。

◆ワクチン開発の年内承認が報道されているものの、ロンドンを擁するイングランドは11月5日から2度目のロックダウンに突入し、開始から10日以上にたってもコロナでの入院患者や死者数は上昇の一途を辿っている。英国におけるコロナ新規入院患者数は、1,500人に達し、春のピーク時に迫る勢いである。ICUのベッド利用者に占めるコロナ患者の割合も春のピーク時(73%)にはまだ及ばないものの、11月に入り既に30%を超えるなど確実に上昇している。ジョンソン政府は当初クリスマスまでには3段階の制限措置(Tier)に戻し、全国的なロックダウンの延長は回避する方向であったが、ここ数週間での急速な入院患者者数の増加によって(ロックダウン延長に)方針転換する可能性が高まっている。

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