コロナ危機をバネに欧州統合は深化し得るか

~EU復興基金の可能性と限界~『大和総研調査季報』 2020年秋季号(Vol.40)掲載

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2020年10月21日

サマリー

コロナ危機への対応策として、EU 27 カ国首脳は7月に7,500 億ユーロのEU復興基金(NGEU)の創設で合意した。打撃が深刻な加盟国に重点を置いた資金の配分もさることながら、NGEUの原資を確保するためにEUが主体となって債券を発行することが画期的である。高格付けが見込まれるEU債は投資家にとっても魅力的で、早くもユーロ圏の長期金利のベンチマークになるとの期待もある。一方で、NGEUの資金を各国が有効活用し、経済復興や成長力強化に貢献したかといった成果を判定できるまでに数年を要すると予想される。

NGEU創設とEU債発行による資金調達は、EUの「財政統合」の重要な布石になると指摘される。EUは経済通貨同盟(EMU)の完成には財政統合を進める必要があると考え、加盟国に対する財政規律の導入などを進めてきた。NGEU創設により、危機に際して加盟国を支援する仕組みが構築されるが、現在のところこれは1回限りの措置である。財政統合の推進には、今後詳細が詰められるNGEUの資金活用に関するガバナンスの仕組みが非常に重要になると考えられる。

大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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