サマリー
◆欧州では、新型コロナウイルスの新規感染者が急増しており、感染第2波への警戒感が高まっている。欧州各国政府は感染拡大抑制のため、段階的に規制強化を実施しているが、経済活動への配慮から、春先に実施した厳格な全国規模のロックダウンの再導入は回避しようとしている。また、地域を限定した規制措置も導入されているが、経済的・社会的影響を受ける地域・業界からの反発も強い。
◆Q3は大幅なプラス成長が見込まれるものの、足もとでは景気回復がペースダウンしており、一段の規制強化によって人や物の流れが滞り、景気減速は避けられないだろう。
◆加えて、コロナ感染で景気の下押し圧力が高まっている中、英国とEUとの新たな将来関係を巡る協議は、移行期間終了まであと70日余りといよいよ期限が迫りつつある。ジョンソン首相は、対コロナでは感染拡大防止と景気回復の維持、対EUでは独立国としての自尊心と経済メリットの享受という二兎を追っている。だが、コロナ感染拡大で阻害されつつある景気回復が、EUとの交渉難航によって一段と脆弱になる恐れがあり、英国経済の先行きは一段と不透明感が増している。
◆英国とEUの交渉難航によって、欧州の景気回復の道程に暗雲が垂れ込める。FTA等の合意しかも早期決着が双方にとって良いはずだが、終わりが見えない交渉の継続は、先行きの見通しを立てづらい状況を長引かせる。仮に土壇場で決着したとしても、二つの可能性に備えなければならない分、企業の不必要なコストを増やすだけである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日