サマリー
◆9月9日、英国政府が、EU離脱協定の一部を一方的に変更する権限を英国閣僚に付与する国内市場法案を議会に提出したことにより、EUからの合意なき離脱の可能性が現実味を帯びてきている。同法案は既に国際法として成立していたEU離脱協定やそれに含まれる北アイルランド議定書(プロトコル)の一部を無効化するものとして、EUは猛反発している。国内からもメイ前首相を始め、メージャー元首相までの5代にわたる首相経験者がそろって、同法案が英国の評判を損ねると強い懸念を表明するなど、昨年秋の議会停会を巡る騒動をほうふつとさせる事態となっている。
◆さらに同法案は、北アイルランドに限って、EUの補助金ルール適用を限定するとも規定されており、英国政府の国家補助金について、離脱協定で過去に合意した義務を無効化する権限も付与されている。協定交渉における主要な未解決事項は①英国水域での漁業権と②公平な競争条件(国家補助金)である。厄介なのは国家補助金で、双方が歩み寄りの姿勢を見せていないことである。一方、9月11日に大筋合意となった日英通商協定においては、英国は、EUとの通商協定よりも、補助金の厳格な制限に対するコミットメントを示している。さらに英国は日英通商協定を足掛かりとし、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を視野に動きだしている。
◆EUと英国との将来的な関係性を巡る協定交渉の次期ラウンドはブリュッセルで9月28日の週に行われる。もちろん、次回の交渉がどのような結果に終わったとしても、英国は今後10年単位で、EUとの新たな関係性を再交渉していくことになる。ブレグジットでは決定的な将来像を予測することは非常に難しいものの、EUとの関係性を悪化させる国内市場法案が成立した時点で、合意なき離脱が大きく近づくといっても過言ではないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 足元堅調もリスクは下向き
長引くインフレリスクと強まる金利上昇圧力
2026年09月17日
-
欧州経済見通し 引き続きインフレに警戒
猛暑で高まるインフレ上振れリスク
2026年08月25日
-
4-6月期ユーロ圏GDP 原油高でも底堅く成長
実質GDP成長率は前期比+0.4%と市場予想から上振れ
2026年07月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

