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現実味を増す合意なき離脱

日英通商協定を足掛かりにTPP加盟を進める英国

2020年09月18日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆9月9日、英国政府が、EU離脱協定の一部を一方的に変更する権限を英国閣僚に付与する国内市場法案を議会に提出したことにより、EUからの合意なき離脱の可能性が現実味を帯びてきている。同法案は既に国際法として成立していたEU離脱協定やそれに含まれる北アイルランド議定書(プロトコル)の一部を無効化するものとして、EUは猛反発している。国内からもメイ前首相を始め、メージャー元首相までの5代にわたる首相経験者がそろって、同法案が英国の評判を損ねると強い懸念を表明するなど、昨年秋の議会停会を巡る騒動をほうふつとさせる事態となっている。

◆さらに同法案は、北アイルランドに限って、EUの補助金ルール適用を限定するとも規定されており、英国政府の国家補助金について、離脱協定で過去に合意した義務を無効化する権限も付与されている。協定交渉における主要な未解決事項は①英国水域での漁業権と②公平な競争条件(国家補助金)である。厄介なのは国家補助金で、双方が歩み寄りの姿勢を見せていないことである。一方、9月11日に大筋合意となった日英通商協定においては、英国は、EUとの通商協定よりも、補助金の厳格な制限に対するコミットメントを示している。さらに英国は日英通商協定を足掛かりとし、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を視野に動きだしている。

◆EUと英国との将来的な関係性を巡る協定交渉の次期ラウンドはブリュッセルで9月28日の週に行われる。もちろん、次回の交渉がどのような結果に終わったとしても、英国は今後10年単位で、EUとの新たな関係性を再交渉していくことになる。ブレグジットでは決定的な将来像を予測することは非常に難しいものの、EUとの関係性を悪化させる国内市場法案が成立した時点で、合意なき離脱が大きく近づくといっても過言ではないだろう。

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