サマリー
◆新型コロナウイルスによる被害が甚大で厳格なロックダウン措置が取られた欧州大陸では、5月に入り入国制限の緩和が発表されるなど、出口戦略がさらに本格化している。ただし欧州で最悪の被害を出した英国では、製造業や建設業など、在宅勤務ができない場合の出勤が促された一方で、未だ可能な限り公共交通機関を利用しないよう呼びかけられている。さらに、6月8日からは、海外から英国に入国する場合に14日間の自己隔離措置が導入される予定である。
◆英国では、イングランド以外のウェールズ、スコットランド、北アイランドでは、政府が示した解除方針に反発し、外出自粛を続けている。英国政府はロックダウン措置解除にあたり、5つの条件を付与しているものの、(英国では)死者数が未だ100人単位のため措置の緩和は時期尚早と判断しているようだ。英国政府のスローガンである“ステイ・ホーム(Stay at home)”と”ステイ・アラート(Stay alert)”の違いが分かり辛いなど、あいまいな判断基準も多く、英国政府の対応に不満を募らせているのが実情である。
◆ブレグジット後のEUとの将来的な関係性に向けた協定を巡る交渉は、新型コロナウイルスの混乱により4月には実施できず、5月15日に3回目の交渉がテレビ会議で行われた。ただし進捗は限られたものであり、膠着状態を打開するには至らなかった。4回目の交渉は6月1日から5日間の予定であるが、ジョンソン首相は、移行期間延長を申請する期限となる6月までに、進捗が思わしくなければ、その時点での交渉打ち切りも示唆している。5日間の交渉の行方次第においては、急速に合意なき離脱の可能性が高まることが警戒される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日