サマリー
◆ユーロ圏経済は2019年末にかけて一段と減速し、10-12月期の成長率は前期比+0.1%にとどまった。一方で企業景況感は2019年秋に下げ止まり、この1月までは改善傾向が続いて、景気持ち直しを期待させたが、中国発の新型肺炎が新たな景気下押し要因として浮上している。新型肺炎に伴う中国の消費と生産の落ち込みは、ユーロ圏の輸出減少だけでなく、サプライチェーンの寸断を通じて生産縮小にもつながる懸念がある。中国における外出禁止や生産停止措置は解除されつつあるが、感染拡大が終息したとはまだ言えない中で、その影響がどこまで及ぶのか、いつまで続くのかの見極めにも時間がかかると見込まれる。
◆英国でも2019年10-12月期の成長率は前期比横ばいと停滞したが、消費者や企業の景況感は2019年末以降、改善傾向が明確である。「合意なしのEU離脱」というリスクシナリオが回避されただけでなく、EU残留かEU離脱かの議論に終止符が打たれたことも好感されていると見受けられる。英国経済は2019年後半に落ち込んだ個人消費や住宅建設投資など内需の持ち直しで、2020年は緩やかに回復すると予想する。ただし、3月初めにも開始される見込みのEUとの「新たな関係」に関する協議は、これまでのところ双方の主張の隔たりが目立っており、難航が予想される。新型肺炎の影響ともども、英国の輸出企業にとって不透明感はなかなか消えないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日