サマリー
◆ユーロ圏経済は2018年半ば以降、景気減速が鮮明となったが、2019年に入って鉱工業生産、輸出、小売売上高に持ち直しの兆しが見られる。企業と消費者の景況感指数も総じて下げ止まりから小幅反発しているが、鉱工業部門の景況感だけはこの3月まで一貫して悪化している。外需見通しの不透明感が晴れていないためで、ユーロ圏がしばらく低成長を続けることを示唆していると考えられる。
◆外需の不透明要因の一つである英国のEU離脱(Brexit)は、その期限が3月29日から10月31日まで延期された。「合意なしの離脱」は当面回避されたものの、いつ、どのように離脱が実現するのか引き続き明確ではない。また、米中の通商交渉が長引く中、いよいよEUと米国の通商交渉が開始される可能性が高まっている。ただし、工業製品の関税引き下げを目指すとの目標とは裏腹に、EUと米国が関税引き上げ合戦に陥る懸念は消えていない。
◆英国でも2019年初めに鉱工業生産、輸出、小売売上高が拡大したが、これには「合意なしの離脱」に備えて在庫を積み増す動きが活発化した影響が大きいとみられ、4月以降はその反動が懸念される。政治の混乱がじわじわと景気に悪影響を及ぼしているが、それがいつまで続くのか見通せないことが最大の問題である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日