欧州における「ポスト冷戦」の30年と今後

『大和総研調査季報』 2019 年春季号(Vol.34)掲載

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2019年04月11日

サマリー

平成元年(1989 年)11 月にベルリンの壁が崩れ、続く12 月の米ソ首脳会談で冷戦の終結が確認された。すなわち「ポスト冷戦」は平成とともに始まった。東西対立の最前線でなくなった欧州では、ドイツ統一が実現し、東欧諸国が続々と西側陣営に加わった。欧州連合(EU)はこの「東方拡大」に加え、通貨統合を含む欧州統合の一段の深化を推進した。

ところが、「平成」が終わりを迎える2019 年現在、EUの統合深化に対する不協和音が高まっており、EU懐疑派政党の台頭が目立つ。また、世界では米国、中国、ロシアとEUを取り巻く大国間で新たな覇権争いの兆しがあり、「新冷戦」という言葉がささやかれている。

EUに対する信頼が低下したのは、ギリシャ債務危機、移民急増問題へのEUの対応に不満や不信感が高まり、経済格差の拡大がそれに拍車をかけたためとみられる。ただし、EUの単一市場、共通安全保障政策、共通通商政策に対する支持は70%を超え、共通移民政策のそれも69%と高い。「ポスト冷戦」と軌を一にして進められてきたEUの統合深化の方針が、今後どうなるかが注目される。

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