サマリー
平成元年(1989 年)11 月にベルリンの壁が崩れ、続く12 月の米ソ首脳会談で冷戦の終結が確認された。すなわち「ポスト冷戦」は平成とともに始まった。東西対立の最前線でなくなった欧州では、ドイツ統一が実現し、東欧諸国が続々と西側陣営に加わった。欧州連合(EU)はこの「東方拡大」に加え、通貨統合を含む欧州統合の一段の深化を推進した。
ところが、「平成」が終わりを迎える2019 年現在、EUの統合深化に対する不協和音が高まっており、EU懐疑派政党の台頭が目立つ。また、世界では米国、中国、ロシアとEUを取り巻く大国間で新たな覇権争いの兆しがあり、「新冷戦」という言葉がささやかれている。
EUに対する信頼が低下したのは、ギリシャ債務危機、移民急増問題へのEUの対応に不満や不信感が高まり、経済格差の拡大がそれに拍車をかけたためとみられる。ただし、EUの単一市場、共通安全保障政策、共通通商政策に対する支持は70%を超え、共通移民政策のそれも69%と高い。「ポスト冷戦」と軌を一にして進められてきたEUの統合深化の方針が、今後どうなるかが注目される。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日