サマリー
◆ユーロ圏では個人消費に加えて輸出が牽引役となり、2017年4-6月期に続いて7-9月期も年率換算で+3.0%近い成長率となった。7-9月期の総固定資本形成は大幅に下方修正されたが、製造業受注は高い伸びを記録し、企業景況感も鉱工業部門を中心に一段と改善しているため、投資の落ち込みは一時的な動きと考えられる。一方、消費者物価上昇率は12月も前年比+1.4%にとどまり、インフレ加速の兆しはまだ見られない。ただし、ECBの金融緩和スタンスの変更に対する金融市場の関心は高く、12月のECB理事会議事録でフォワードガイダンスの変更の可能性が示唆されると、市場金利が上昇し、ユーロ高が進んだ。ECBは先々の利上げを視野に入れているが、前のめりの利上げ期待とユーロ高、金利上昇は牽制しつつ、「非伝統的な金融緩和」の修正に向けた地ならしに取り組むと予想される。
◆英国でも輸出拡大を受けて鉱工業生産は拡大基調にある。しかし、英国経済の主役である個人消費は、Brexit(英国のEU離脱)決定に伴うポンド安でインフレとなったこと、さらに、Brexit交渉の行方が不透明であることが重石となり、2017年に明確に減速した。英国とEUは2018年初めから離脱交渉の第二段階に入ったものの、Brexit後の「移行期間」や、英国とEUの新たな通商関係に関する話し合いが進展するのか、2019年3月の離脱期限に間に合うように離脱協定が合意されるのか不透明なままである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
-
欧州経済見通し 「トランプ」が欧州連帯を促す
貿易摩擦激化の可能性が高まる一方、国防費の増加議論が急展開
2025年03月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日