リスボン条約50条は本当に行使できるのか?

ハード・ブレグジットを阻止したいスコットランド

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2017年01月23日

サマリー

◆メイ首相は1月17日の演説の中で、離脱の意思を正式にEUに通告することを意味するリスボン条約50条行使を、2017年3月末までに行うと正式に宣言した。50条行使期限の正式発表は、英国が最後まで離脱を先延ばしすることを警戒していたEU側からも好感をもって受け止められている。議会開会の期間を考慮すると現実的な50条行使は2月以降とされ、行使を巡る関連法案提出後、速やかに上下院で可決するという流れが想定される。


◆同法案は、下院では問題なく承認されるとみる向きが多い。現に下院は昨年末の動議の際に圧倒的多数で、政府のEU離脱決定を支持している。一方、 与党保守党が過半数に達していない上院において、同法案が否決されることでEU離脱プロセスが遅れる可能性も指摘されていた。しかし、上院議長は選挙で選ばれた議員で構成される下院の意思を上院が尊重するとして、EU離脱を阻むことはないとしている。


◆ただ地方分権が進んでいる英国では、残留支持が多数を占めるスコットランド議会など、地方政府議会から英国政府の50条行使に合意を得られるかが焦点になってくる。英国議会が、地方政府議会が権限を持つ分野での立法や法改正を行う場合、慣習として英国議会は各地方政府議会から承認(同意)を求めることになっている。リスボン条約50条の行使権限を持つのが議会か担当相かということに加えて、行使に際し、地方政府議会の同意を必要とするかという点も問われてくる。

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