サマリー
◆メイ首相は1月17日の演説の中で、離脱の意思を正式にEUに通告することを意味するリスボン条約50条行使を、2017年3月末までに行うと正式に宣言した。50条行使期限の正式発表は、英国が最後まで離脱を先延ばしすることを警戒していたEU側からも好感をもって受け止められている。議会開会の期間を考慮すると現実的な50条行使は2月以降とされ、行使を巡る関連法案提出後、速やかに上下院で可決するという流れが想定される。
◆同法案は、下院では問題なく承認されるとみる向きが多い。現に下院は昨年末の動議の際に圧倒的多数で、政府のEU離脱決定を支持している。一方、 与党保守党が過半数に達していない上院において、同法案が否決されることでEU離脱プロセスが遅れる可能性も指摘されていた。しかし、上院議長は選挙で選ばれた議員で構成される下院の意思を上院が尊重するとして、EU離脱を阻むことはないとしている。
◆ただ地方分権が進んでいる英国では、残留支持が多数を占めるスコットランド議会など、地方政府議会から英国政府の50条行使に合意を得られるかが焦点になってくる。英国議会が、地方政府議会が権限を持つ分野での立法や法改正を行う場合、慣習として英国議会は各地方政府議会から承認(同意)を求めることになっている。リスボン条約50条の行使権限を持つのが議会か担当相かということに加えて、行使に際し、地方政府議会の同意を必要とするかという点も問われてくる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/6/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年06月03日
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
2025年1-3月期法人企業統計と2次QE予測
前年比で増収増益も製造業は不調/2次QEではGDPの下方修正を予想
2025年06月02日
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
米国大手小売店の決算にみる、DEI施策の取り下げと売上高・株価の関係
2025年06月06日
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日