サマリー
◆欧州銀行を対象とした欧州銀行監督機構(EBA)によるストレステストの結果は、7月29日欧州大陸時間(CET)10時に発表が予定されている。ストレステストの対象は、EU51行でありEU銀行セクターの70%の資産をカバー(ECBは管轄下にある39行を選出)する。ストレステストの方法は、EUの経済成長率が標準的予測であるベースシナリオと、悪化シナリオにおける銀行の健全性を評価する。
◆市場が注目する銀行の中でも、不良債権比率の高さに敬遠されBrexit後に株価が過去最低を記録したイタリアのモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(MPS)は、今回のストレステスト以降、不良債権の削減や自己資本比率の向上が厳しく求められることが確実視されている。ただし、市場からの調達は難しくイタリア政府による公的資金注入が現実的との声が多い。しかし2016年1月から導入されているEUの銀行再建・破綻処理指令(BRRD)により、債権者の負担共有(ベイルイン制度)が公的救済の前提条件となっているため、救済の大きな障壁となっている。
◆現段階でストレステスト後に資本不足が指摘された時、イタリア政府が狙うのが、BRRDの例外条項と言われている。加盟国の経済における重大な混乱など金融安定性を損うシステミックリスクが高い場合には、BRRDの適用除外が認められており、ベイルイン無しで公的資金注入を認める規定が存在する。無論、導入されたばかりのBRRDのベイルイン制度に対して、欧州委員会もあからさまに例外を認めるわけにもいかず、原則と実務の落としどころを巡る今後の協議の方向性が注目されている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日