サマリー
◆7月13日朝、17時間におよぶユーロ圏首脳会合での協議の末、遂にギリシャ債務危機に関する支援合意にたどり着いた。土壇場でギリシャのユーロ離脱(Grexit)は回避されることとなったが、最終的にユーログループから突きつけられた要求に対して(ギリシャ議会での)即時の法制化が求められており、予断を許さない状況に変わりはない。
◆7月15日の水曜日までに合意案を法制化するための最大の障壁は与党SYRIZAの動向であろう。急進左派としては久々に欧州内で政権を握ったSYRIZAは、2012年に様々な活動家(社会主義、共産主義、反ファシスト)などの寄せ集めで作られた政党である。政権公約に対しても反緊縮のみの単一イシューで集結していた感が否めず、自ら厳しい緊縮策を法制化すること自体、政権公約から乖離するため党の分裂は免れない。
◆ドイツが7月12日のユーログループで提案した「一時的なGrexit」の一文の削除には成功したものの、今回の合意案を全て受け入れることは、近い将来ギリシャ政府にとって自らGrexitを選択せざるを得ない状況に追い詰められるといっても過言ではない。現状のギリシャ情勢では景気回復は望めず、不況がさらに続くことは目に見えている。その結果、プライマリーバランスの達成目標が未達に終わり、自動的な歳出削減が起こりさらに経済が縮小していくという悪循環に陥る。特に債務減免無しでこの緊縮策の全面受け入れを行うことは、ほぼ自殺行為であり、近い将来、同じ債務問題が繰り返し起こる可能性は高い。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 「トランプ」が欧州連帯を促す
貿易摩擦激化の可能性が高まる一方、国防費の増加議論が急展開
2025年03月21日
-
欧州経済見通し トランプ関税で高まるリスク
最悪シナリオは報復関税による貿易戦争
2025年02月26日
-
10-12月期ユーロ圏GDP ゼロ成長に失速
ドイツ、フランスのマイナス成長が足を引っ張る
2025年01月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日