サマリー
◆日本では「国家戦略特別区域」の指定が迫りつつある中、規制緩和の柱である雇用に関する議論が活発化している。「解雇特区」などと表現され、正社員が解雇されやすくなるとの批判も多いが、OECDの指摘を引用して「日本は解雇が最もしづらい」と規制緩和の必要性を説く意見もある。OECDは以前から日本の正規雇用に対する雇用保護が極めて強いことを繰り返し指摘し、是正するよう勧告してきた。しかし、日本は本当に「正規雇用の解雇が最も難しい国」なのだろうか。
◆報道などでよく取り上げられる、OECDのEPL指標(雇用保護規制の強さを測る指標)によると、日本は正規雇用に対する保護の強い国と位置付けられる。しかし、OECDの大半を占めるEU加盟国にも規制の厳しい国は多くあり、EPL指標の結果のみでは日本が特に非難される理由とはならない。
◆OECDの勧告を確認すると、最も問題視しているのは日本の正規雇用に対する強い保護規制そのものではなく、それが正規/非正規の格差を生み出していることである。日本の非正規の年収は正規の6割程度に抑えられており、格差の縮小も見られない。EUコア国でも正規/非正規の収入格差は存在するが、日本のそれよりも小さい。
◆EUでは明確な労働条件の提示義務の下、フレキシキュリティという雇用の柔軟性と失業時の手厚い保障を同時に行う労働市場政策を行っている。日本政府案では契約型の雇用形態の普及を目指しているが、それの達成には、EUのように失業時のセーフティネット(保障、職業訓練、就職支援等)も同時に手厚くすることが必要であると考える。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利上げ後、状況が一変
原油価格下落で追加利上げは様子見/スターマー首相辞任後の注目点
2026年06月23日
-
欧州経済見通し 家計主導の景況感悪化
製造業では駆け込み需要が下支え/英国では政治不安がリスクに
2026年05月27日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 市場予想に反して減速
かろうじてプラス成長も、原油高の悪影響本格化の前から成長停滞
2026年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

