夢物語ではなくなったユーロ圏財政統合

危機をめぐるコンセンサスの変化

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2012年10月26日

  • 児玉 卓

サマリー

◆ECBによるOMTの市場沈静化効果が効く中で、10月のEUサミットは無風に近い状態で終わった。OMTの威力の源泉は、金額無制限、優先弁済権の放棄の二つに集約される。もっとも、ECBに可能なことは流動性の供給にすぎず、OMTも時間稼ぎの域を出るものではない。にもかかわらず、それが強い市場沈静化効果を発揮しているのは、世の中のコンセンサスが変化しているからである。

◆1年前、既にユーロ圏危機の収束には財政統合が必要という見方がコンセンサスになっていた。しかし同時に、その実現可能性は絶望的というコンセンサスも存在していた。相変わらず政治の歩みは遅いものの、今では一般認識として財政統合は夢物語ではなくなってきている。この変化が、OMTという時間稼ぎの効力を後押ししている。とはいえ、だから安心というわけではなく、財政統合は被救済国に痛みを強いる形で進められる。社会的・政治的にデフレ政策が持続可能かという深刻な問いは未回答のままである。

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