EU財政統合の展望と英国の立ち位置
~危機が発する求心力と遠心力~『大和総研調査季報』 2012年夏季号(Vol.7)掲載
2012年09月03日
サマリー
ユーロ圏危機は中途半端な統合という経済的欠陥の諸症状であるとともに、構成国の国益のぶつかり合いの中で共通利益を目指すという政治的矛盾の結果でもある。ユーロ圏は差し当たり政治統合を伴わない財政統合というナローパスを進まざるを得ず、それは構成国の国民の合意形成という作業を不可欠とする。従ってどうしても時間がかかるが、政治的、社会的なユーロ圏の統合深化の素地はできつつある。一方、こうした統合深化はユーロ非加盟EU諸国に重大な政治選択を迫る。中でも統合に距離を置くことで実利を得てきた英国は、EUにおけるリーダーシップの喪失、ひいてはEUにとどまることの利益の減少に直面する。「英国は欧州とともにある、だがその一部ではない」という原点回帰の可能性が時とともに高まろう。
欧州の経験は、経済活性化を動機とした統合体希求がいかに危険な賭けであるかを日本に教えている。日本が目指すべきはアジアの統合体ではなく、アジアにおける「国と国」の関係深化の徹底であると考える。
大和総研 リサーチ本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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