欧州財政統合あってのLTRO、ESM

債務再編もギリシャを救わない

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2012年03月13日

  • 児玉 卓

サマリー

◆ギリシャの民間向け債務再編にいったんの目処がついた。しかし、再再編、再支援の懸念は払拭されていない。実際、ギリシャという国の公的債務が存在する限り、支援が繰り返される可能性は残存しよう。景気が悪く税収が増えないといった循環的苦境もさることながら、同国の固定資本形成が過去4年で半分に減っており、成長基盤が損なわれつつある。

◆ユーロ圏危機対応の焦点はESM等のセーフティネット強化に移ったといわれ、LTROの市場沈静化効果がユーロ圏首脳の危機感を薄れさせ、議論の進捗が滞っているともいわれる。しかし、ESMが多少増額されたところで、予算制約のないECBのLTROほどの効果を持つことはない。いずれも財政統合への議論が深化するまでの過渡期的な時間稼ぎに過ぎず、セーフティネット強化の議論の遅れを深刻な問題と見る必要はなかろう。

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